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まるでラピュタの世界!犬島精錬所美術館
島の風景と溶け込む「家プロジェクト」のアート作品の数々
まるでラピュタの世界!犬島精錬所美術館
採石業とともに、犬島の産業で重要な役割を果たしたのが銅の製錬業。製錬施設や発電所が設けられ、明治40年代に隆盛を極めました。従業員の数は最盛期には2,000人を超え、島の人口も5,000人を超えるまでに増加。島の人口が50人ほどの現代からは想像もつきません。
広場の先にある犬島精錬所美術館のゲートから一歩足を踏み入れると、過去にタイムスリップしたような空間が広がっています。
黒光りするカラミ煉瓦が積まれた景観が至るところに。ここは、製錬所稼働時には、鉱石や銅製品の置き場として使われていました。ほぼその当時のまま保存されています。製錬所は、1918年(大正7)年末には操業休止となり、わずか10年ほどの歴史に終止符を打ちました。カラミ煉瓦とは、銅の製錬過程で発生する鉱さいから作られたものです。
この煙突のあるところが犬島精錬所美術館です。犬島製錬所の閉鎖後、銅製錬所の遺構は、ベネッセコーポレーションの「犬島アートプロジェクト」により美術館として保存・再生されることになりました。
2008(平成20)年4月に、犬島アートプロジェクト「精錬所」としてオープンし、2013(平成25)年に犬島精錬所美術館と改称。「在るものを活かし、無いものを創る」というコンセプトで、世界的に活躍する現代美術家の柳幸典氏、建築家の三分一(さんぶいち)博志氏の力で、負の遺産がアートとして蘇ったのです。
美術館に入ると、薄暗い空間の通路が続き、柳幸典氏の「ヒーロー乾電池」という作品が、6つのスペースに展示されています。(写真撮影は禁止です。)かつて日本の近代化に貢献し、隆盛を誇った製錬所。現在はその跡を残すのみとなった姿に、日本の近代化に警鐘を鳴らした小説家 三島由紀夫というモチーフを重ね、現代社会のあり方について問いかけています。
美術館の建物の隣には、廃墟感満載の銅製錬所の遺構があります。
宮崎駿監督のスタジオジブリ作品『天空の城ラピュタ』を思わせる廃墟感漂う銅製錬所の遺構に圧倒されます。遺構を巡る散策路の南端には発電所跡もあり、こちらも必見です。
振り返ると海が間近に見えるロケーションもいいですね。製錬所稼働時は、対岸にある沖鼓島に犬島製錬所の社宅がありました。
左手には、犬島チケットセンターの先に対岸の風景が広がっています。
島の風景と溶け込む「家プロジェクト」のアート作品の数々
<犬島精錬所美術館の東の集落に点在する「家プロジェクト」>
犬島精錬所美術館を出て、「家プロジェクト」の標識に従って左手のほうに向かうとあるのが「家プロジェクト」と呼ばれるアート作品が集まったエリア。
家プロジェクトは直島にもありますが、こちらは、アーティスティックディレクターに長谷川祐子、設計にブリッカー賞受賞の建築家・妹島和世氏を迎えて、2010(平成22)年に始まりました。
家プロジェクトは、「日常の中の美しい風景や作品の向こうに広がる身近な自然を感じられるように」との願いが込められた屋外型の企画展示のこと。
5つのギャラリー(F邸、S邸、I邸、A邸、C邸)と、中の谷東屋、石職人の家跡に、様々なアーティストの作品が公開されています。これは、透明アクリルの壁が連なる「S邸」。
F邸には、複数の作品が坪庭を含む建物全体の空間に展示されています。
島の風景と溶け込む作品が多く、こちらのA邸の作品もその一つ。犬島の自然に見られる幾何形体、人びとの暮らしの生命感をエネルギーあふれる色を用いて表現されています。
向かい合う3つの鏡を配置した作品で、2方向からは窓からの風景を写し出し、作品中央の一点に立つと、無限のトンネルの中にいるような不思議な感覚を覚えます。
集落内の空き地に展開される「石職人の家跡」。動植物などの生命力あふれるモチーフがこの島の土地に根ざすように描かれています。
一通り作品を鑑賞したら、犬島港に戻りましょう。港に戻る道にはこんなものも。うさぎの形で可愛いですね。
島のあちこちには池がありますが、これは山などを切り崩して地中深くまで掘られた採石場の跡。
犬島を後にして、宝伝港に戻ります。犬島港からは、宝伝港行きの高速船のほかに、豊島(てしま)の家浦港、直島の宮浦港行きの高速船も出ています。アート鑑賞を目的とした島巡りをするなら、豊島、直島も含めた2泊3日ぐらいのプランにしてもよいでしょう。
犬島(犬島精錬所美術館/家プロジェクト)
- 住所:岡山県岡山市東区犬島
- 開館時間:9:00〜16:30(最終入館16:00)
- チケットセンター 9:00〜17:00
- 休館日:火曜~木曜日(3月1日~11月30日)※ただし祝日の場合は開館、12月1日~2月末日は全日休館