自己検証の動きが見られないテレビ朝日
今回の『報道特集』の内容をどう評価するか。元日本テレビ報道局記者兼ドキュメンタリー番組ディレクターで上智大学文学部新聞学科の水島宏明教授はいう。
「ジャニーズ事務所が自ら創業者で元社長、ジャニー喜多川氏による少年への性加害があった事実を認めて以降、メディアの側、特にジャニーズ事務所と関わりが深かったテレビ局が自らの姿勢を検証した報道としては、NHK『クローズアップ現代』(9月11日放送)、日本テレビ『news every.』(10月4日放送)、TBS『報道特集』(同7日放送)の3つが挙げられる。特に『報道特集』が報道、制作、編成の社員・元社員の数十人に組織的に話を聞き取ったことは高く評価していい。
2004年に最高裁が民事訴訟でジャニー氏の性加害を事実として認定する決定を出した際にTBSがなぜ報じなかったかについて、当時の司法担当記者は、オウム裁判の判決直前で忙殺されており、ジャニー氏の件は意識していなかったという。また、12年にジャニー氏が追突事故を起こして相手にケガをさせて書類送検された時には、ニュース原稿が用意されていたのに、編成の幹部が報道の幹部と話して放送されなかったことも公表した。担当記者は『忖度そのものだと思った』と憤慨したという。明確な圧力があったわけではないが、社員がジャニーズ事務所という存在を『忖度』していた当時の様子を聞き取り、その結果を伝えていた。私自身も長年、テレビの報道現場で記者をやっていた経験から見て、このTBSの自己検証はかなり丁寧に社内でヒアリングを実施しており、踏み込んだ内容になっていたと思う。
この自己検証は、NHKや日テレの検証番組と比較しても、可能な限りのことをしていると感じた。テレビ局のなかでもTBSという会社は、それぞれの記者などが『独立・自立』した存在という意識が強い。そこで行われた検証は、他局に比べても信頼性が高いと思う。テレビの報道番組を欠かさず視聴している人間として見ると、この3つの局が自らのまずい点を含めて社内調査を行ってそれを放送していたと思う。
フジテレビも組織的な調査ではないものの、『なぜ報道してこなかったのか』について責任者が生放送で詳しいコメントを話している。ジャニーズ事務所の2度目の記者会見があった10月2日、フジテレビは夕方のニュース『Live News イット!』で「報道局編集長」という肩書の責任者が、当時は司法担当記者だったもののあまり重大なニュースだと思わなかったと個人的な認識の甘さを反省していた」
一方、水島氏はテレビ朝日の姿勢に対し次のように疑問を呈する。
「これら4局に比べると、ほとんど自己検証の動きが見られないのがテレビ朝日だ。かつて上層部がジャニーズ事務所と密接な関係を築いたことなどから『社内的な検証』には後ろ向きなのだろうと想像する。だが、看板番組『報道ステーション』を抱え、『報道のテレビ朝日』というイメージを強く押し出している同局が、取材体制・ネットワークが弱いテレビ東京を除くキー局で唯一、頑なに『検証しない』姿勢を貫くのは奇異に感じる。スポンサーも含めて、メディアが子どもへの人権侵害についてどう向きあってきたのかが問われている今、頬被りは許されないはず。自らを検証する責任が各社にある。TBS『報道特集』はあくまで途中経過であるものの、そうした責任を果たしたと言えると思う」
(文=Business Journal編集部、協力=水島宏明/上智大学文学部新聞学科教授)
提供元・Business Journal
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