リニアはいまだ開通せず札幌再開発にも遅れ、新幹線開業は最大5年後ろ倒しか

 北海道新幹線の札幌延伸に向け、札幌では再開発が進んでいる。例えば北海道最大の歓楽街・ススキノでは、旧「ススキノラフィラ」跡地で複合施設「COCONO SUSUKINO(ココノススキノ)」の整備が進んでおり、11月末の開業を予定している。そこから少し北へと向かうと、地下鉄大通駅までの間に複合施設「モユク札幌」や「ピヴォクロス」などが立ち並ぶ。札幌駅に目を移すと、南口には西武百貨店跡「北4西3」地区に再開発ビルが建設予定。しかし入居を予定していたホテルは、建設資材高騰のため入居を断念した。8月末に閉店した札幌駅隣接の商業施設「エスタ」跡に建つ予定のビルについても、事業費が大幅に増えると報道されている。

 新幹線にとどまらず、新しい路線の開業が延期した事例はいくつかある。例えば8月26日に開業した栃木県の「宇都宮ライトレール」(JR宇都宮駅東口から芳賀・高根沢工業団地間14.6km)は当初、22年3月の開業を予定していたが、数回の延期を経て1年5カ月後に開業した。昨年11月に発生した試運転事故や作業員不足等による工事の遅れなどが尾を引いたのだ。

 東京都心でも工事が遅れている路線がある。都心から羽田空港を直接結ぶ「羽田空港アクセス線」(田町駅付近から羽田空港新駅<仮称>間工事延長12.4km)だ。JR東日本は31年度開業予定としているが、当初は29年度開業予定だった。共同通信によると、「地盤が軟弱なことから、当初の見通しより工事に時間がかかる」「工事内容を精査した結果、難航が予想される」という。なお、工事の着工式は今年6月に開かれており、開業へ向けて工事が進められることになる。

 そして現在、最も注目されている鉄道関連の話題といってもいいのが、品川駅から名古屋駅を約40分、大阪駅を約67分で結ぶ「リニア中央新幹線」だ。都心から大阪までを約1時間で結ぶこともあり、移動時間の短縮が図れるとして期待の声が大きい。中央新幹線はまず品川―名古屋間が27年の開業、大阪までの全線開業は45年の予定だったが、最大8年の前倒しを目指すこととなり、37年に全線開業する予定だった。

 ところが、この予定は大幅に遅れることになりそうだ。リニアの建設をめぐっては、ルートの途中にある静岡県が工事によって生じる残土の盛り土の安全性や大井川の水など複数の懸念があることを理由として工事の着工をいまだ認めていない。JR東海の金子慎社長(現会長)も今年3月、静岡の着工のめどがたっていないことから、「遅れを取り戻すことができない」と開業が遅れると認めている。報道等では川勝平太・静岡県知事の「妨害」とも取れる対応が物議を醸しており、今後の進捗は静岡県、いや川勝知事の出方次第で変わってくるだろう。

 リニアはレアケースとして、残りの2つのケースを見ると、約1~2年ほどの遅れで開業、または開業する見込みだ。遅れの理由も「工事の遅れ」が共通点としてあり、北海道新幹線の工事の遅れとも合致する。そのため、北海道新幹線の札幌延伸開業は30年度末から延期され、31~32年度末となるのではないか。しかし現在も続く物価高や原材料費の高騰、イスラエル情勢やウクライナ情勢の緊迫化などの影響で今後の見通しはつかない。そのため、5年前後遅れる可能性を想定しておく必要があると考える。新幹線開業の延期は五輪や札幌の経済、ひいては北海道の経済にも影響を及ぼすかもしれない。そのため開業延期による損失をどのように穴埋めするのかという視点も必要となってくるだろう。

(文=小林英介)

提供元・Business Journal

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