2030年度末開業予定の北海道新幹線・新函館北斗―札幌間をめぐり、建設工事が遅れていることなどを理由として開業が数年ずれ込む可能性が出てきた。建設を含め、さまざまな業界で24年4月に働き方改革関連法に基づき時間外労働の上限規制が適用され、「2024年問題」が危惧されていることも背景にある。また、札幌市が2030年の冬季オリンピック・パラリンピックの招致中止を決めたことも影響しているとの指摘もある。
山下JOC会長「34年以降の冬季大会について開催の可能性を探る」
「昨今の状況を踏まえ協議した結果、2030年大会招致の活動を中止し、34年以降の冬季大会について開催の可能性を探ることに変更する」
10月11日、都内で開かれたJOC(日本オリンピック委員会)の山下泰裕会長と秋元克広・札幌市長が出席した共同記者会見で、山下会長が30年五輪の札幌招致の断念を明言し、34年以降の冬季五輪の招致を目指す見通しを示した。秋元市長も招致の断念について言及したうえで、「IOC(国際オリンピック委員会)との継続的な対話を引き続き行っていくことで合意」したと述べた。続けて秋元市長は、昨年に発覚した2020東京五輪をめぐる汚職事件などによって「五輪に対する不信感が増大したことから、本年5月に検討委員会を立ち上げて大会運営の見直し、検討を進めてきた」「この夏には市民対話事業を精力的に行い、従来から懸念の声が大きかった大会経費等も含めて説明を行ってきた」と強調。ただ市民からは依然として多くの懸念の声があるとして、「招致に対する理解が十分広がったとは言い切れない状況にあると言わざるを得ない」と断念した理由について説明した。
五輪については賛否両論あるが、34年の招致に照準を合わせることになった。ただその34年五輪についてはアメリカのソルトレークシティーが最有力であり、アメリカの五輪・パラリンピック委員会(USOPC)が動いている。そのため「札幌五輪の招致は厳しい」との見方が大勢を占めている情勢だ。北海道のブロック紙である北海道新聞は10月7日付一面に「30年度札幌延伸 延期へ」「五輪断念受け調整」との記事を掲載。以下の文章が記されていた。
「札幌市が冬季五輪の招致時期を34年以降に変更する方針を固めたことで、政府関係者は同日『札幌延伸を急ぐ理由がなくなった』と述べ、新幹線の札幌開業を延期する環境が整ったとの認識を示した」
本稿記者はこの政府関係者の発言に少し違和感を覚える。全国新幹線鉄道整備法第1条には、その目的として「この法律は、高速輸送体系の形成が国土の総合的かつ普遍的開発に果たす役割の重要性にかんがみ、新幹線鉄道による全国的な鉄道網の整備を図り、もつて国民経済の発展及び国民生活領域の拡大並びに地域の振興に資することを目的とする」とある。新幹線はその速達性から、地域と地域との移動を迅速に行えるようにする交通手段だ。たとえ札幌五輪に間に合わず、「札幌五輪に合わせて開業」という夢が叶わなかったとしても、新幹線は通すべきではないか。そして政府関係者の「急ぐ必要がなくなった」との言い方はよろしくない。「努力していたが残念だ」「申し訳ない」という言葉が出てくるなら理解できるが、あまりにも地元をないがしろにしていると感じる。今後は地元自治体がJRなどと調整を続ける見込みだ。