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無骨な軍用スタイルから、柔らかな民間スタイルへ
海外市場でトヨタを支えたランドクルーザー
無骨な軍用スタイルから、柔らかな民間スタイルへ
モデルチェンジした20系ランクルは、警察予備隊向けで軍用一点張りだった初代BJと異なり最初から民間向けに広く販売する目的で開発されたため、実用性・生産性オンリーのデザインから曲線を多用したデザインとなりました。
エンジンルームの外へ後付の形だったヘッドランプは大型の丸目2灯式となって、幅広くなったフロントマスクのグリル両端へ配置され、丸みを帯びたボンネットと合わせ、既にランクルを世界的名車へ引き上げた40系へつながるデザインがほぼ完成しています。
フェンダーやテールデザインも丸みを帯びたものになって、当時としては十分モダンなデザインとなり、現存車をレジャー向けやリフトアップでカスタマイズしても似合いそうです。
ただし当時の基準で作られた内装だけは鉄板むき出し、快適性よりは「無事に目的地へたどり着き、補修も容易」が重点な事には変わらないので、現実的には既存のランドクルーザープラドなどを20系風デザインへカスタマイズするのが一番でしょう。
実際、トヨタ車体ではランクル系各車へ40系のボディを載せるなどのカスタムメニューが東京オートサロンで披露されましたし、20系があってもよさそうです。
なお、20系ランクルの仕様はショートホイールベースでシングルキャビンに荷台を組み合わせたピックアップや、横向き対面4人乗り後席の幌またはメタルキャビンを持つベーシックモデルが「FJ25」。
積載性を重視したテールゲートつきのFJ21、セミロングボディのFJ28V、ロングボディのFJ28VA、ロングホイールベースで快適性を高めたFJ35Vなど。
型式最初の「F」は3.9リッターのF型搭載車を表しますが、初代と同じ3.4リッターのB型エンジンを積むBJ25やBJ21もありました。
ベーシックモデルのFJ/BJ25がホイールベース2,285mmなのに対し、セミロング/ロングボディのFJ28V/FJ28VAでは2,430mm、ホイールベースをさらに伸ばしたFJ35Vでは2,650mm。
25/28系が現在のランドクルーザー70やランドクルーザープラドの元祖なら、FJ35Vは現在のランドクルーザー300の元祖と言えるでしょう。
海外市場でトヨタを支えたランドクルーザー
戦前には中国大陸を中心に輸出し、戦後も輸出制限の緩和で1949年から輸出が再開されると、沖縄(1972年に日本へ変換されるまでアメリカの統治下にあった)、台湾、タイ、ブラジル、そして1955年からは中近東への輸出も再開されます。
さらに自動車大国アメリカへも進出しようと1957年に米国トヨタ販売会社を設立、翌1958年には初代クラウンの試験的輸出が始まったものの、何しろ当時の日本には高速道路もマトモな舗装路のサーキットもありません。
1956年に完成した1周2kmのテストコース、あるいはオートレース場などで十分な高速試験ができるはずもなく、アメリカに持ち込まれた初代クラウンはフリーウェイでオーバーヒートなどトラブル頻発し、マトモに走れないのが判明しました。
当時のアメリカの新聞には、旭日旗のような朝日を背景に勇躍登場したクラウンが、フリーウェイの入り口を前にスゴスゴと帰っていく風刺漫画が掲載されるなど、現在では信じがたい、しかし当時では当たり前の笑い物となります。
それでも必死の改良で何とか克服し、2代目コロナも「ティアラ」の名で輸出しますが、その頃にはアメリカのメーカーも、ヨーロッパの小型車(相変わらず日本車は眼中になかった)へ対抗すべくシボレー コルヴェアなど小型車を投入すると、もう勝負になりません。
仕方なく、1960年にはクラウンもティアラもアメリカへの輸出を停止したトヨタですが、唯一ユーザーからの信頼を勝ち得て輸出を継続したのが、ランドクルーザーでした。
1960年には20系の後継、名車として知られる40系ランクルへモデルチェンジしていますが、そこまでの対米輸出を支え、トヨタを踏みとどまらせたのは20系の軍用上がりらしいタフな信頼性と悪路走破性だったのです。
これはアメリカに限った話ではなく、1957年に4,116台と前年の880台から大きく伸びた輸出実績のうち半分以上を占め、1961年以降倍増して軌道に乗るまでの輸出はランドクルーザーが頼みの綱でした。
まだ国内での自動車販売がトラックやバス、タクシー以外見込めなかった時代、トヨタが躍進するには輸出しかないという状況の中、大きな役割を果たしたランドクルーザーは、「信頼性が高く頑丈な日本車」という評判にもつながっていったのです。
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文・MOBY編集部/提供元・MOBY
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