近時、金融界においては、ESGの名のもとに、環境等の様々な社会問題解決における産業界の経営者の役割と金融との関係が熱心に論じられ、また、国連においても、SDGs、即ち、持続可能な開発目標が掲げられるなかで、人類の課題として、産業と金融の活動を通じた社会問題の解決が叫ばれはじめている。つまり、今まさに、地球における人類の生存について共通の危機感が醸成されつつあるのである。

しかし、そのような危機感の高まりのなかでも、なお、金融は優越的な力を行使してはならない。もしも、金融に優越的な力の行使を認めるのならば、金融は政治的に統制されるべきである。実際、たかが金融が産業界に対して社会問題解決へ向けた統治改革を要求すれば、逆に産業界から金融界の統治改革を求められるのは必定で、金融界に優越的な力がある限り、金融界の統治改革は政治によるほかないからである。故に、金融界は、自主自律性を守るために、たかが金融の地位にとどまるべきなのである。

森本 紀行 HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長 HC公式ウェブサイト:fromHC twitter:nmorimoto_HC facebook:森本 紀行

 

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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