フランス、カナダはドイツ、アメリカと同様に名目でも実質でも上昇が続いています。

イギリスはリーマンショックを機に名目成長率がやや緩やかになり、実質が横ばいとなっています。

イタリアは名目成長はしていますが、実質では横ばいです。

日本とイタリアは平均給与の実質は横ばいですが、名目ではイタリアは成長しているという点が異なりますね。

4. 平均給与の実質成長率

次に、平均給与の実質化に使われる物価指数である民間最終消費支出デフレータについても見てみましょう。

1991年を基準(1.0)とした指数(倍率)で表現してみます。

図5 民間最終消費支出 デフレータOECD統計データ より

図5が主要先進国の民間最終消費支出デフレータです。

日本は1997年をピークにして減少傾向が続き、2014年から緩やかに上昇しています。

他の主要先進国は基本的に右肩上がりに上昇していますね。

図5 平均給与 実質成長率OECD統計データより

図5が各国の平均給与 実質成長率を比較したグラフです。1991年が基準(1.0)となります。

日本とイタリアは横ばいが続いていますが、他の主要先進国は上昇しています。

イギリスはリーマンショック以降横ばい傾向ですが、他の主要先進国は上昇が続いていますね。

1991年の水準からすると、日本とイタリア以外は1.3~1.5倍程度になっています。韓国に至っては2倍近くに達しています。

他の主要先進国は名目の平均給与が物価以上に上昇していて、実質でも成長しているという事になります。

日本は、名目がやや減少していますが、物価が近年減少した分だけ嵩上げされて実質では横ばいという形です。

イタリアは逆で、名目では成長していますが、物価も同じだけ上昇していて、実質では横ばいですね。

5. 平均給与の特徴

今回はOECDの統計データで公表されている、平均給与の名目・実質について各国の数値をご紹介しました。

基本的には日本以外の各国とも右肩上がりに成長していますが、次のような点が異なるようです。

名目も実質も停滞している日本 名目は成長しているが実質で停滞しているイタリア 名目も実質も成長している他の主要先進国(ただしイギリスはリーマンショック以降実質で停滞)

1人あたりGDPに関しては、日本は名目では停滞していますが、実質では成長しています。また、毎月勤労統計調査では、日本の実質賃金では減少が続いているという結果もあるようです。

そもそも名目で停滞していること自体が特殊なわけですが、日本では実質さえ成長していれば問題ないといった意見も多いようです。

平均給与ではその実質ですら停滞、あるいは減少している事になりますね。

労働者への分配である給与が増えなければ、消費も増えません。

皆が安いものを求めるのも当然ですね。

皆さんはどのように考えますか?

編集部より:この記事は株式会社小川製作所 小川製作所ブログ 2023年10月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「小川製作所ブログ:日本の経済統計と転換点」をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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