イスラエル軍はパレスチナのガザ地区北部の住民約110万人に対して「24時間以内に南部に退避するよう」と通告したという。イスラエル側はパレスチナのイスラム過激派テロ組織「ハマス」の虐殺テロへの報復としてガザ地区に地上軍を投入し、ハマスのテロ組織を壊滅する作戦だという。

ハマスのテロ襲撃で亡くなったイスラエル人への追悼(エルサレム・ポスト紙のヴェブサイトから、2023年10月13日)

イスラエル軍はガザ地区内のハマスの拠点を空爆してきたが、ハマスを壊滅するためには地上軍の投入が不可欠と判断して、30万人の予備兵を招集し、戦車など地上部隊をガザ地区境界線に集結してきた。

ガザ地区は長さ約40キロ、幅6キロ~12キロの約365キロ平方メートルの細長い地域に約220万人のパレスチナ人が住んでいる。その大きさはオーストリアの首都ウィーン市の415キロ平方、人口約200万人より少し小さい。イスラエル軍はそのガザ地区を完全に包囲し、電気、水道、食糧、医療品などの供給をストップ。そのため、水や食糧はあと数日でなくなるものと予想され、国連側はガザ地区の人道状況を懸念している。

ガザ地区には3カ所、国境検問所があるが、イスラエル軍は全てを封鎖している。イスラエルとハマスの間を調停するカタールや国連はエジプトに国境検問所をオープンし、食糧や水をそこからガザ地区に供給する案が出ているが、エジプト側はガザ地区への国境検問所のオープンには難色を示しているという。

アラブ問題専門家によると、「エジプトは、ガザ地区の境界線を解放すればハマスなどイスラム過激派が国内に流入し、エジプト内の治安が悪化すると懸念している」という。

ちなみに、ガザ地区のハマスは「ムスリム同胞団」を母体として生まれてきた「イスラム抵抗運動」だ。「ムスリム同胞団」は1929年にエジプトで生れたイスラム原理主義の政治組織であり、トルコやカタールで大きな影響を有している。

ハマスは2007年からガザ地区を実効支配しているが、ハマスは単に政治グループだけではなく、学校、病院、幼稚園などを経営し、住民への社会的サービスを行ってきた。人口220万人のうち、ハマスのメンバー、そのシンパは約半分、すなわち、約100万人と推定されている。

「ハマス」の今回のテロに対して、欧州では「ハマス」を支援するパレスチナ人グループを禁止する動きが出てきている。ドイツのショルツ首相は12日、「ハマスはテロ組織であり、そのテロ組織を支援するパレスチナ人グループがベルリンなどで集会し、ハマスの今回のテロを歓迎することは絶対に許されない」と述べている。米国、欧州連合(EU)は「ハマス」をテロ組織に指定している。