そのうえで私は志位委員長に二つの具体的な質問をした。第一は尖閣諸島に中国が軍事攻撃をかけてきた際に日本共産党はどんな対応をするのか、だった。第二は、日米同盟をなくし、自衛隊をなくした後の日本はなんらかの独自の防衛組織を持つのか、という問いだった。

志位委員長は多くの言葉を費やし、尖閣諸島があくまで日本の固有の領土であり、中国側の領有権主張は不当だと説明した。この点はきわめて常識的、良識的な答えだった。さらに実際に中国の軍事攻撃があった場合、日本側にはまだ自衛隊が残っているから、それが反撃に出るだろう、という趣旨を遠回しな表現で示唆した。

志位氏は私の第二の質問に対しては、国際的に平和な環境の条件が整うまでは自衛隊はなくさないという趣旨を角度を変えて、何度も語った。ところが私が最後に「しかしついに自衛隊をなくしたという後には、日本独自の防衛組織は持たないということですね」と念を押すと、志位委員長は「持たない」と明確に答えたのだった。

この点での志位氏の主張は明快であり、論理に沿っていた。その前に先立つ説明で、憲法9条は戦力の保持を禁止しているから、明らかに戦力に匹敵する自衛隊も本来、禁止された存在なのだ、という趣旨を強調していたのだ。憲法9条の保持となれば、自衛隊はあってはならない存在になるとする主張だった。

この点、日本共産党の最近の主張は「自衛隊はすぐにはなくさない」とか「自衛隊は日本の周囲が真に平和にならない限り保持する」という表現が多い。自衛隊の存続を容認するかにもひびく言辞である。だが厳密には、そして正確には日本共産党はいまの自衛隊を違憲とみなし、究極的には廃止とし、その後には防衛組織は保持しない、という政策なのである。つまり日本共産党は日本の非武装政策を掲げているのである。

このような思考を志位委員長は率直に語ったのだった。なお私が日本共産党が中国共産党に対して、日本への干渉を跳ね返すような形で関係を断絶した過去の独自路線の実績を前向きに指摘すると、志位委員長は「そうです。毛沢東主席が日本国内での武力闘争を始めろと要求したことに対して、断固と反対したのです」と顔をほころばせた光景は印象に残った。

古森 義久(Komori Yoshihisa) 1963年、慶應義塾大学卒業後、毎日新聞入社。1972年から南ベトナムのサイゴン特派員。1975年、サイゴン支局長。1976年、ワシントン特派員。1987年、毎日新聞を退社し、産経新聞に入社。ロンドン支局長、ワシントン支局長、中国総局長、ワシントン駐在編集特別委員兼論説委員などを歴任。現在、JFSS顧問。産経新聞ワシントン駐在客員特派員。麗澤大学特別教授。著書に『新型コロナウイルスが世界を滅ぼす』『米中激突と日本の針路』ほか多数。

編集部より:この記事は一般社団法人 日本戦略研究フォーラム 2023年10月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は 日本戦略研究フォーラム公式サイトをご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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