世の中は減税の大合唱だが、与野党ともに圧倒的に多いのは消費税を減税しろという話だ。その中で、消費税を増税して法人税を下げろと提言しているのが財界である。

法人税率を下げると税収が上がる

先日出た経団連の主要政党の政策評価には「社会保険料負担の抑制を含む現役世代の負担増を抑える財源確保策の具体化」と書いてあるだけだが、9月に出た提言には「中長期的な視点からは、消費税の引上げは有力な選択肢の一つ」と書かれている。

これは正しい。社会保険料負担を抑制するには(給付の削減とともに)世代間で公平に負担する消費税を増税すべきである。問題はこれを「法人税の引き下げのために消費税を上げる」と解釈する人が多いことだ。これは左巻きのマスコミだけでなく、右翼にも多い。

財界が法人税の引き下げを要求してきたことは事実である。これを「財界エゴだ」という人が多いが、次の図のように、法人税率が42%だった1990年度の法人税収(バブルの絶頂)は19兆円だったが、2023年度は税率がそのほぼ半分の23.2%になったのに、法人税収は14.6兆円。2010年以降をみると、法人税率が下がった時期に税収は上がったのだ。

これは法人税のパラドックスと呼ばれ、1980年代以降、ヨーロッパ諸国では法人税率を引き下げたが、税収が上がった。その最大の原因は、法人税の高い国から低い国に生産拠点を移す資本逃避が起こったからだ。かつては工場を移動するにはコストがかかったが、今はGAFAMのグローバル本社機能の多くは、法人税率12.5%のアイルランドにある。