その中で川口市で解体業を起業し同市のクルド人コミュニティのリーダー「ビックボス」と呼ばれる人物の取材に成功している。

内容は「ビックボス」視点での7月の川口市立医療センター前の騒乱の原因や彼の日本での苦労話、日本人住民の声として「地域に住んでいる我々にとっては、過激な排斥運動など、在日のクルド人と衝突をするのはやめてほしい。」などを紹介している。

記事を読んだほとんど読者はこの「ビックボス」はルール違反はしないという感想を持つだろう。

ルールを理解できる知性の持ち主だから「ビックボス」は異国の地で成功したのである。

しかし、川口市の意見書で想定しているクルド人は「ビックボス」のようなルールを理解しているクルド人ではなく、ルールを理解していないクルド人と考えるのが自然である。ルールを理解できる知性の持ち主は「暴走行為、煽り運転」なんてしない。

記事内に出てくる日本人住民はクルド人への「過激な排斥運動」には懸念するが、クルド人による暴走行為、煽り運転は黙認するというのも理解し難いことである。

また、この「ビックボス」という表現自体、クルド人への偏見を高めるだけだろう。

「ビックボス」は日本のルールをよく理解し、並の日本人よりはるかに優秀だろうが、「ビックボス」は日本在住のクルド人の代表者ではないし、法的にそのような代表者はつくることもできない。

「ビックボス」「コミュニティ」という言葉が繰り返されることで意識されるのはクルド人の「前近代性」だろう。

「クルド人は権限と資格が不明な『ビックボス』なる人物の指示にしか従わない人達だ」「クルド人は日本のルールより所属コミュニティのルールを優先する人達だ」といった感想を持たれるだけだろう。

川口市議会の意見書に回答すべきである

現時点で私達日本人が「川口市のクルド人問題」で行うべきことは川口市議会の意見書への回答、即ち「警察官の増員」「資材置場周辺のパトロール」「暴走行為等の交通違反の取り締まり」を行うか否かである。

この中で重要なのは「警察官の増員」なのは明らかだろう。

専門家の指摘によると警察官1人あたりの負担人口が500人程度確保できれば治安は維持できるとされるが、

(1)埼玉県警は636人であり、全国ワースト1位である (2)「川口市のクルド人問題」ではそもそも「埼玉県警は少ない」という理解が必要である。

警察官が少なければクルド人がルールとの衝突・接近を自覚する機会が減るわけだから、彼らの違法・迷惑行為が増加することは不思議なことではない。

意見書は「地域の窮状を伝え緊急的に解決」の文言を用いて警察官の増員を求めている。この表現は極めて重い。

なぜなら警察官の管理は都道府県、その都道府県間の警察人員の調整を行うのは国(警察庁)であり、要するに市町村は警察官増員などの警察力の整備・強化に関与できず、治安上の責任を果たすことができないからである。

川口市議会は日本社会にボールを投げた(意見書の採択)。このボールを受け止め投げ返す(意見書に回答する)ことがクルド人問題に関心がある日本人の責務だろう。

もちろん筆者は埼玉県警の増員に賛成である。

そしてこのキャッチボールに「多文化共生」「悪いことは日本人もやっている」「クルド人は日本人がやらない仕事をやっている」といった主張は不要と考えるし、この種の主張こそが日本人と外国人の間の紛争解決を遅らせ、最悪、深刻化させると考える。

もっと言えば紛争発生の遠因となっていると考えるのは穿ち過ぎだろうか。

【参考資料】

(1)警察刷新に関する緊急提言「第9時代の変化に対応する警察を目指して」において 「警察官一人当たりの負担人口が500人となる程度まで地方警察官の増員を行う必要 がある。」と指摘

(2)「令和5年版警察のあゆみ」8頁 「4警察官1人当たりの負担状況(令和4年度条例定数)」を参照

 

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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