ハマスによるイスラエル領内での凄惨なテロ攻撃に対して、イスラエルが苛烈な報復攻撃を始めた。ハマス(あるいは「ハマス等テロリスト勢力」)のテロ攻撃は凄惨であるだけではない。ガザ地区住民の生活を犠牲にして、イスラエルの過剰反応を引き出すことを狙った行為だと言わざるを得ない点で、極めて残忍なものだったと言える。
ハマスの勢力は、ガザ地区内でも、海外からの支援の面でも、減退気味であった。暴発的な作戦を行い、イスラエルに過激な反応をさせることによって、あらためて存在感を高めることを狙った行為であったと言える。それに対し、イスラエル政府も、イスラエルとの連帯を表明した欧米諸国も、ハマスの計算通りに過剰反応しようとしているようだ。
イスラエルでは、悪評高い司法改革で、ネタニヤフ首相が支持を失っていたところだった。自らの保身のための起死回生の作戦とすることを狙っているかのような扇動的な態度で、ハマス撲滅のための軍事作戦を開始した。開始当初を見ると、その内容は、懸念だらけだ。

9月に対面したばかりのバイデン大統領とネタニヤフ首相 同首相SNSより(編集部)
まずガザ地区全域で水・食料・電気・燃料等を止める住民封鎖をした。これは明白に戦争犯罪行為である。また住民に避難せよと警告しているとも言われるが不明瞭なものであり、実質的に無警告に近い状態になっていないか懸念がある。ハマス関連施設だけを攻撃しているというイスラエル軍のわずかな広報内容(後付けで公開)と矛盾して広範に被害が出る爆撃をしている懸念がある(その印象を与える動画がいち早く世界中に拡散されている)。数多くの民生施設が破壊されている。イスラエルのハマス関連施設の定義は広すぎて、ガザにあるもの全てが該当してしまうようなものだ。少なくとも国際的な基準にそったものではない。これから地上戦が開始されるというが、明白な戦争犯罪あるいは戦争犯罪の疑いが強い行為が助長されていかないか、大きな懸念がある。
この様子は、ハマスの狙ったものだと言わざるを得ない。
近年に積み上げてきたイスラエルの外交努力は水泡に帰し、中東での孤立が高まることは必至だ。イスラエルとの連帯を表明している欧米諸国は、戦争犯罪の共犯扱いをされ、中東あるいはイスラム圏全域での評価を下げる。