運送会社に求められる説明能力

――先ほどおっしゃった便乗値上げについて、これはどんな中身なのでしょうか。

坂田 極端な例ですが、今まで3万円だった運賃をいきなり6万円へ値上げするよう要請されても、それは受け入れらません。ビジネス構造上無理ですが、そういう運送会社もあると聞きます。「どうして6万円という金額が出てきたのか。それならサヨナラするしかないよね」というケースも聞いています。

 一般的にビジネスで値上げをする場合は何らかの品質向上を求められてきますが、物流2024年問題が周知されることによって、メリットのトレードオフを示さないで単純に運賃の値上げができる環境が整いつつあります。それに便乗して、荷主に「なぜこれだけの値上げを要求してくるのか」と聞かれたら「今まで儲かっていなかったので、それを取り戻したい」と答える運送会社が中にはいるそうなのです。本来、例えば「うちのドライバーの年収は業界平均の430万円ぐらいで、これを500万円までアップしたいのですが、そのための売り上げから算出した運賃がこの金額です」と説明できなければなりません。荷主に対して原価構成をすべて公表する必要はありませんが、「今の運賃ではドライバーの日当をこのぐらいしか支払えないが、せめてこのぐらいアップしないと人を雇えません。協力していただけませんか」という程度の説明ができないと交渉になりません。

――小口多頻度配送の増加もドライバー不足の背景として指摘されていますね。

坂田 それはあくまで宅配便の問題です。トラック輸送に占める宅配便の比率は、正確には分からないのですが最大でも5%に達していません。しかも2021年度実績で宅配便は、ヤマト運輸、佐川急便 、日本郵便の3社で94.8%を占めているので、宅配便におけるドライバー不足は3社がそれぞれ対応すべき問題です。物流業界全体の問題ではありません。