9月中頃ネットを騒がせた、100円ショップ「Seria」の偽SNSアカウント騒動。9月16日にアカウントが削除されたことで事態は収束したかに思われましたが、多くのフォロワーを抱えたまま、アカウント名とIDを変えて9月24日に復活。
さらには英語で「このアカウントを購入した」といった旨の投稿を行うなど危険な動きをみせていました。そこで編集部では新オーナーの「X」(以下、X氏)を名のる人物に接触。話を聞くことに成功しました。
本稿では、騒動のこれまでを振り返りつつ、自称「X氏」へのインタビュー内容も加えて詳報します。
■ 偽Seriaアカウント騒動とは
そもそも「偽Seriaアカウント騒動」とは、2023年9月11日にX(Twitter)にて突然注目をあつめた企業公式アカウントに端を発しています。それが後に偽だとわかる100円ショップ「Seria【公式】」アカウントです。

以降で時系列順に起きた出来事と、新たに取材した内容も交えて紹介していきます。
-- 9月8日(金):「Seria【公式】」を名乗り初投稿
アカウント名は当初「Seria【公式】」、IDは「@Seria_PR」でした。初投稿は9月8日17時55分で、「100円ショップのSeria(セリア)公式アカウントです!~#企業公式相互フォロー」といった内容。
-- 9月11日(月):フォロワーが急速に増え始める
初投稿から数日あいた9月11日、最初の投稿が他のXユーザーから発見され注目を集め始めました。
この頃のフォロワー数はまだ300といった程度。しかし、最初の投稿に「#企業公式相互フォロー」というハッシュタグがつけられていたこともあり、一般以外に多くの企業公式アカウントもフォロー。
この「多くの企業公式アカウントがフォローしている」という安心感からか、その後さらにフォロワー数が増加。9月16日までに、2万4千フォロワーも集めています。
-- 9月14日(木):Seria公式サイトで注意喚起発表される
事態が急転したのは9月14日に行われた、Seria公式サイトでの発表。「SNSの偽公式アカウントにご注意」という注意喚起が公開されました。これによってXにあった「Seria【公式】」は偽者であることが判明。
すると、偽SeriaはXへの投稿にて「自分はSeriaの店舗スタッフである」、誤解を招いたのでアカウント名から「【公式】」を外すと説明。また、Seria本社に自ら連絡をし「相談中」であることも投稿されました。
-- 9月16日(土):アカウント削除を宣言/編集部の取材も受ける
Seria本社と相談中であるとしていた偽Seriaアカウントでしたが、9月16日17時にアカウント削除の予告を投稿。削除予定時間は同日18時となっていました。

また、同時に編集部からの取材にも、DMを通じて応じています。取材時間は同日17時08分から17時30分まで。(このときの様子は別記事で詳報済み)
当時編集部に対して、偽Seriaの中の人は「私はSeriaの店長でして」「本部の意向で記事化はしないでほしい」といった内容を語っています。なお、後にSeria本社に取材したところ「確実な個人特定が難しい状況です」とし、記事化への指示についても「本社は関与しておりません」と完全否定しています。
こうして編集部とやりとりをしている最中、編集部から最後の質問を送った17時30分の直後に、予定時刻よりもはやく偽Seriaのアカウント削除が行われました。

-- 9月17日(日):IDに「@Seria_PR」を使用した「偽のセリア、ニセリア」アカウントが登場
「Seria(@Seria_PR)」のアカウントが削除された翌日。9月17日21時頃に、今度は「偽のセリア、ニセリア(@Seria_PR)」が発見され再びネットで話題になりました。
偽SeriaのIDと一致していましたが、本人は「前の持ち主とは一切関係がない」と、プロフィールなどで説明。しかし、XのIDは「アカウント削除から30日間は別の人が使えない」仕様になっていることから、「元の偽Seria中の人ではないか」と疑う人も少なくありませんでした。

実はこれには例外があり、IDを変更した(IDを捨てた)場合にはすぐ再利用できるようになっています。
【X(Twitter)サポートより引用】
「ユーザー名を変更した時点で、元のユーザー名は他の人のアカウントでも選べる状態になります」
※ユーザー名は本稿ではIDと記しています。
また、XはID変更をしてもフォロワーや、DM内容はそのまま引き継がれる仕様になっています。よって一度でもDMでやりとりしたことがある人は、容易に後が追える仕組みです。
そこで、偽Seriaとやりとりを行った編集部のXアカウントからDMを確認したところ、このとき偽Seriaはアカウント名を「このアカウントは無効です。」、IDは「@user_rm1~~※」に変更されていました。もちろん「偽のセリア、ニセリア(@Seria_PR)」とは紐付いていません。
※現在このIDは使用されておらず、あまり話題にもなっていなかったため、今後を考え念のために一部を伏せて掲載します。
やはりどこかのタイミングでID変更を行ったもようです。これにより、「@Seria_PR」が解放され、一時期だれでも取得できるようになっていました。それに気づいたのが「偽のセリア、ニセリア(@Seria_PR)」です。
現在「@Seria_PR」のオーナーである「偽のセリア、ニセリア氏」にも、IDを取得した当時について聞いています。
IDを取得したのは17日の21時頃とのこと。また、ID変更はアカウント削除前に行われたと「偽のセリア、ニセリア氏」は考えていましたが、実は異なります。編集部がこの日たまたま撮影していた記事用動画に、変更のタイミングが偶然にも映っていました。
IDが「@Seria_PR」から「@user_rm1~~」に変わったのは17日の15時16~17分。

つまりアカウントを一度削除した翌日に、瞬間的に復活させてID変更を行った、ということになります。そして解放されたわずか6時間の間に「偽のセリア、ニセリア氏」がIDを確保した。
「偽のセリア、ニセリア氏」には、今後のアカウント運用方針についても聞いています。今後は「ログアウトして放置しようかなと考えています」とのことでした。
-- 9月20日(木)・21日(金):「このアカウントは無効です。(@user_rm1~~)」に定期的にログインか?
偽Seriaが「@Seria_PR」のIDを捨てたことで再び事態が収束したかに思われましたが、編集部で観察していたところ、「このアカウントは無効です。(@user_rm1~~)」のアカウントは定期的に復活削除を繰り返していた可能性があります。
時々ユーザーアイコンが、偽Seria時代に使用していた「Seriaロゴ」に復活する瞬間があり、不審におもいスクリーンショットで記録しています。確認できているのは9月20日15時18分と、9月21日20時09分。
-- 9月24日(日):今度は「X(@x1234567891002)」に転生→復活
次に目立つ動きがあったのは9月24日13時49分のことでした。

今度は「X(@x1234567891002)」というアカウント名とIDに変更し、「I bought this account because it was up for auction.(このアカウントはオークションに出品されていたので購入した)」と投稿しました。
偽Seria判明後には大きくフォロワー数を減少させたものの、それでも復活時点でフォローしていた人はまだ1万9千。「売買された可能性がある」ということから編集部では即危険と判断。すぐに注意喚起の記事を公開しています。
■ 編集部では復活した「X(@x1234567891002)」に対して接触再開
以上がこれまでの流れです。編集部では元偽Seriaアカウントが「X(@x1234567891002)」として復活して以降、再びDMを通じて接触を試みていました。
一度は逃げるようにアカウント削除をされましたが、「また取材にこたえる」という予感があったからです。
聞いてみたかったのは「本当にアカウントを買ったのか」「偽Seria(元のオーナー)と同一人物ではないのか」という2点。
「アカウントを購入した」と宣言してはいるものの、言っていることが真実だとは限りません。
-- 9月28日(木):「X(@x1234567891002)」とやりとり開始
こうしてメッセージを送り続けること数日。9月28日12時54分に最初の回答が届きました。なお、偽Seria時代には日本語でのやりとりでしたが、「X(@x1234567891002)」(X氏)とは全て英語でやりとりしています。
全3回、合計1時間半かけて行ったやりとりの内容を総括すると、相手が主張したのは「アカウントはオークションで50Kで購入した」「自分はサンフランシスコにいるビジネスマン」「フォロワーが多いアカウントがほしかっただけで、用途は考えていないが詐欺に使うつもりはない」という3点です。


相手の話が嘘か本当かはもちろんわかりませんが、やりとりする中で不審点しか感じませんでした。全てのやりとりは記事末尾に掲載するので、最後に目を通してもらえれば記者たちが感じた「不審点」がより明確に伝わるかとおもいます。
そしてやりとりの最中、今度はDMが閉じられ、前回と同じく以降連絡が取れない状態に。「お前は日本人の恥だ」という言葉を残して、再び逃げてしまいました。

ちなみにDMを閉じた直後にこの「X氏」は、自身のタイムラインに「Japanese people are difficult to deal with(日本人は扱いにくい)」と投稿しています。
