【ヘッセン州議会選】
ボリス・ライン州首相のCDUは得票率約34.6%を獲得し、前回選比で7.6%増と大勝利だった。両州議会選で唯一、選挙で勝利した政党ともいえる。AfDは18.4%で前回比で5.3%得票率を伸ばし第2党に躍進。一方、SPDは15.1%(前回比4.7%減)、緑の党14.8%(5.0%減)と両党とも大きく得票率を失い、FDPは5.1%(2.5%減)で辛うじて5%を超えた。ショルツ連邦政権に参加するSPD,緑の党、FDPの3党はいずれも得票率を失う厳しい結果となった。
SPDは同州ではナンシー・フェーザー連邦内相を党筆頭候補者に迎えて選挙戦を展開してきたが、党史上最悪の結果となった。フェーザー内相は選挙戦で敗北したならば、ベルリンに戻り、内相を継続したいと表明してきたが、選挙後の同内相の立場は不確かだ。投票率は約66%。なお、ライン州首相は「緑の党」との現連立政権を継続する意向が強い。
【ミニ解説】
米国の中間選挙では大統領ポストを有する与党が野党に苦戦するケースが多いが、任期2年目が終わるショルツ連立政権にとって今回の2州議会選は国民の中間評価という性格がある。そして米国と同様、与党の3党は両州で得票率を失った。エネルギー価格、物価の高騰、住居問題などを抱えるドイツの国民経済は目下リセッション(景気後退)だ。ウクライナ支援でも国民に疲れが見える一方、不法な移民・難民の急増に直面して、現政権は対応に苦慮している。その当然の結果として、移民・難民政策では厳格な路線を主張するAfDが両州で飛躍したわけだ。
独週刊誌ツァイト(オンライン版)は「右傾化は東ドイツだけの問題ではない」という見出しで報じている。バイエルン州もヘッセン州も旧西独の州だ。AfDはこれまで旧東独州の有権者を支持基盤としてきたが、旧西独地域でもAfDは着実に支持基盤を広げていることが明らかになった。ただし、ドイツではどの政党もAfDとの連立を拒否しているため、AfDは永遠の野党としての地位に甘んじるか、過半数の支持を獲得して単独政権を目指すかの選択肢しかない。後者は当分、非現実的だ(「極右政党の“政権パートナー探し”」2023年6月14日参考)。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年10月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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