そもそも自衛隊には揚陸作戦の具体案もありません。揚陸作戦の司令部もありません。
そして次世代の揚陸艦の構想すらない。で何個中隊をヘリで移動させ、何個中隊を海上から揚陸させるのかグランドデザインがない。そしてヘリにしてもチヌークを使うのか、別のヘリを使うのかも明らかではない。仮にチヌークを使うのであればローターをたたむなり、塩害対策をするなり、海上航行のシステムを導入するなり必要でしょう。現状それもないわけです。
どのような運用をするのかも決まっておらず、国産の水陸両用装甲車がほしいという小学生レベルの話をしているだけです。
陸自は水陸作戦にいい加減で、当事者能力がありません。
AAV7にしても導入時ろくなトライアルもしてません。本来2年のトライアルして採否を決めるといっていたのに、「アメリカ様から言われたから」と半年に短縮して、リーフでの揚陸試験すらしてない。
実地調査の結果からも、サンゴ礁が海面すれすれまである場所も数多くあり、水上を円滑に走破するためには車両の喫水の浅さが不可欠である。
しかしながら、AAV7は車両の波除処置が十分でなくかつ浮行速度も遅いので、場所によってはサンゴ礁に抵触し、航行できくなる恐れが十分考えられる。
ちなみにAAV7の運用は機甲科部隊が実施している。
そんなことは試験前からわかっていた話です。それを注文していた指揮通信車、回収車の到着もまたずに、形だけのトライアルを行って採用した。このような連中に当事者意識も軍事の専門家としての見識もありません。
当時バイキングなど他の候補を真面目に検討したことも、実例として遥かに参考になる英海兵隊への調査も行っていません。陸自が調査を開始したのはぼくが英海兵隊取材を行ったはるか後になります。
この中では、有人車両と無人車両を開発するとされている。
このため、開発された新水陸両用車は、島嶼への事前配備は言うまでもなく、敵勢勢力の占領した島嶼の奪回作戦では、まず無人車両が前衛部隊として突入し、自律的な機動や火力を発揮して、敵の減殺を図った後、有人車両による着陸上陸作戦を実施して、敵の壊滅を図ることとなろう。
これは単に調達数を増やすための方便です。そもそも水陸機動団のAAV7調達数だって相当胡乱です。52両のAAV7はおおすみ級3隻では輸送できない。どの程度をヘリで機動させるのか、それすらも怪しい。英海兵隊でも調べておけばこんな胡乱な調達はしなかったでしょう。
それに巨大な新水陸両用車無人化する利点は全くありません。無人車輌ならばもっとコンパクトにできます。その方がコストの面でも有利です。輸送型の装甲化無人車輌など不要です。橋頭堡を確保したあとの補給であれば装甲化の必要性は薄いでしょう。因みに英海兵隊ではバイキングは装甲車ですが、支援車輌は非装甲のBV.206 を使用しています。
恐らくは上を見ても50両程度では開発費を含めた調達単価が全くお話にならないレベルだと、開発途中で気がついたのでしょう。ですから「最近流行」の無人車輌型も作って生産数を稼ごうという腹でしょう。
仮に無人型を開発するならば当初から無人型でいいしょう。ゴム製履帯をはかせた、あるいは低圧タイア、それにゴム製履帯を巻いたものを途中まで舟艇で運び、海上で落として上陸させればいい。輸送型も同じです。更に申せば舟艇の無人化を研究すべきでしょう。
陸幕に当事者意識も能力もなく、単に新水陸両用車を開発して買うこと自体が目的になっているとしか思えません。それは単なる税金を溝に捨てるような行為です。
むしろ実際に開発能力があるのであれば、ゴム製履帯の開発にリソースを割くべきです。
ゴム製履帯の可能性 前編
ゴム製履帯の可能性 後編
国産水陸両用装甲車への白日夢
まあ、それも重工にその能力があればの話です。
ゴム製軍用履帯の市場はほぼカナダのソーシー社が独占しています。ミシュランも参戦しますが、全体的な市場規模はかなり大きい。国内のゴムメーカーと協力して重工が、ゴム製履帯を開発して、これをまずは既存の装軌式車輌に使用して、更にそれをてこに輸出するのであれば相応の雇用が生まれるでしょう。外貨も稼げます。現在の武器油輸出の規制下でも輸出になんの問題も無いはずです。
妄想と、素人考えで使えもしないクズである水陸両用装甲車を作るよりもよほど国防と国益に寄与すると思います。
編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2023年10月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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