結論から言わせて貰えば現在防衛省が開発している水陸両用装甲車は失敗します。それに使うリソースは全部無駄に終わる。そんな金があるならば、まだ水陸両用装甲車用に開発している、ゴム製履帯に突っ込んで世界に売れる製品を作る方が遥かにましです。
そもそも三菱重工の装甲車開発能力は高くありません。諸外国の日進月歩から完全においてけぼりです。その世界の市場にアクセスしていないから、自分たちがどれだけ遅れているかも理解できない。MRJにしてもそういう唯我独尊文化が失敗の最大の原因です。
自分たちが劣っているという自覚も認識も無いので、向上しないのは当たり前の話です。
そもそも重工の装甲車が世界レベルに達していれば次期装輪装甲車は、重工のMAVだったでしょう。何しろ共通戦術車と同じですから、量産効果もあるし兵站や教育でも有利です。それだけ下駄を履いていて、国内生産企業すら決まっていなかったAMVに勝てなかったわけです。
共通戦術車は偵察型がエルビットの偵察システム、自走迫撃砲型はタレスの迫撃砲システムを採用していますが、共通戦術車の開発が遅れたのは、重工のシステム統合の能力が低かったからです。これは厳然たる事実です。
米国の海兵隊が、日本が開発中の最新鋭AAVを採用するかもしれないのだ。世界一厳しい目を持った軍隊が、日本の技術力を評価しているのである。
「しれない」ですから。採用するとは言っていません。
そもそも論ですが、現代の上陸作戦では米軍ですら敵前強襲上陸作戦は想定しいていません。しかも水平線より先の沖合40キロ以上からです。今後兵器の発達で更に遠方からになる可能性もあります。
米海兵隊が本当にそのような装甲車が必要ならばAAV7の後継のEFV(Expeditionary Fighting Vehicle:遠征戦闘車)が、2011年にキャンセルとなった後に、更に後継を開発していますよ。
米海兵隊はAAV7の近代化も諦めて装輪のACVに一本化しています。英海兵隊では揚陸作戦ではヘリと海上が半々で両方とも中隊です。そして海上は舟艇と、それに搭載したバイキングで行います。両者とも共通しているのはヘリでの空輸を重要視しているところです。
AAV7の二倍の水上速度になってもさほど早いわけではない。フネよりも水上航行能力は低い。それが40キロ先からやってくればいい的になります。
それに水陸両用車は巨大です。20名乗りだし、水上航行に必要なエンジンやウォータージェットなどシステムは陸に上がれば不要なデッドウェイトです。
大きな車体は敵のいい的になります。