川崎Fの臨機応変な守備が奏功
川崎Fの鬼木達監督は、10月3日の蔚山現代戦(AFCチャンピオンズリーグ)と同じく[4-1-2-3]の布陣を選択。特に先制ゴールを奪った後は、基本布陣[3-4-2-1]の福岡の3バックに川崎Fの前線の選手がじわりじわりと寄せ、パスコースを限定しようとしていた。
特に際立っていたのが、福岡のDF宮大樹(3バックの左)に対する川崎FのMF家長昭博の守備だ。右ウイングFWで起用された同選手が、宮から福岡のDF小田逸稀(左ウイングバック)へのパスコースを塞ぐような寄せ方をしていたほか、逆に縦パスのコースを塞ぎ、宮のパスをサイドへ誘導しようとする場面も。味方の中盤や最終ラインの選手が、ボールの奪いどころを絞りやすい状況を作っていた。
「福岡の3バックは無理してパスを繋いでこない(傾向)ですけど、とは言えフリーで蹴らせてしまうと良い配球をされてしまいます。そこへの追い方やプレスのかけ方は良かったと思います」
試合後の囲み取材に応じた脇坂のコメントからも、自軍の守備への手応えが窺える。10月3日の蔚山現代戦でも、川崎Fは相手チームの自陣からのパス回しを片方のサイドへ追いやる守備、逆にサイドへのパスコースを塞ぐ守備を状況に応じて使い分けている。このバリエーション豊富なプレスが、今回の準決勝でも威力を発揮した。
福岡の課題は配球のバリエーション
最前線の山岸のポストプレーは相変わらず安定していたものの、3バックからの効果的な配球が少なく、ゆえに攻撃に変化を加えられなかった福岡。川崎Fの3トップに警戒されていたとはいえ、3バックからチャンスメイクできそうな場面はあった。
前半15分の福岡の攻撃シーンが、その典型例。この場面ではDF奈良竜樹(センターバック)が自陣でボールを保持すると同時に、ハーフウェイライン近辺に立っていた小田(左ウイングバック)がフリーだったが、奈良はここへ配球せず。奈良からMF井手口陽介にショートパスが送られたものの、これが川崎Fのハイプレスのスイッチとなった。
福岡の3バックが川崎Fのハイプレスを浴びたことで、小田はやむを得ず帰陣。自陣で宮からの横パスを受けた小田自身も、川崎FのDF山根視来(右サイドバック)のプレスに晒されている。小田のロングパスを山岸と金森が繋いだことで事なきを得たが、川崎Fにボールを回収され、速攻を浴びるリスクもはらんでいた。
前半15分以外にも、小田がハーフウェイライン近辺且つ対面の山根に捕捉されにくい立ち位置をとれている場面があったため、ここへ素早く配球できていれば川崎Fを困らせることができたかもしれない。3バックからの配球ルートの拡大は、福岡が今後突き詰めるべき課題だろう。