日本を含めて世界中に数多くのワインコンクールがあるが、このような検証結果があるとワインのラベルに貼られた受賞ステッカーの信憑性まで怪しく思えてくる。実際、消費者側としてはワインコンクールをどれほど信用していいものなのか。「20世紀最高の料理人」と称されるジョエル・ロブション氏の下でシェフソムリエとして14年間仕えた、日本を代表するトップソムリエの信国武洋氏はこう語る。
「ワインのコンクールの信憑性に関しては千差万別で、ばらつきの要因には審査員の質が関係しています。たとえば、日本のコンクールだと審査員は日本独自のワインの資格を持っている人がいますが、そうした資格はペーパーテストと多少のテイスティングをしたら取得できるものがあります。ワインに日常的に携わっていない人が審査員をやっていることも多い。話題性のある著名なコンクールでも、ほぼアマチュアの審査員を集めていることがあり、そうなると品評会というより個人的な好き嫌いによる多数決のようになってしまいます。
そのような審査員ばかりのコンクールの場合、今回話題になったベルギーでの検証のように、高級そうなラベルが貼ってあったら『審査員が先入観で品質が高いと思い込み、金賞に選んでしまう』といったことは起こり得ます。もちろん、日本でも『インターナショナル・ワイン・チャレンジ』のように歴史があり、長年ワインに携わっているプロを審査員にそろえた、公平性と信頼性の高いコンクールはあります。また、コンクールでも銘柄を伏せたブラインドテイスティングによる審査の場合は、ラベルによる先入観でおいしいと思い込んでしまうようなことはないでしょう」(信国氏)
検証では「お金儲けのためのコンクールなのでは?」という疑問が提示されていたが、信国氏によると「お金目的だけのコンクールはあったとしても続かない」とのことで、単に審査員のレベルが低かったがゆえの「400円ワインで金賞」という結果だった可能性もあるようだ。
今回の検証企画は「わざとまずい安ワインをコンクールに送る」というものだったが、世間では「高級なワインは品質が高い」というイメージは当然として、安いワインの中にも「値段以上においしいものがある」という説がある。実際、信国氏のようなプロの目から見たらどうなのだろうか。
「私がふだん扱っているワインは1本2万円からで高いものだと数百万円になりますが、私の経験からすると品質は8割くらいが値段に比例します。やはり値段は裏切らないので、高いほうが味がよい傾向はありますね。ただ、比較的低価格のワインでも2割くらいはサプライズで『こんなにおいしいのか』とビックリするものがあります。これは手ごろな価格のワインでも同じで、雑誌の企画で2000~3000円程度の家飲み用ワインを集めて目隠しでテイスティングしたことがあったのですが、その中の2割くらいは値段を超える品質で、倍以上の価格でもおかしくないようなレベルでした。ただ、逆に値段に見合わない低品質のものも何割かはあります」(同)
われわれ一般庶民だと、ふだんの家飲み用ワインは1本1000円以下にしているという人も多いのではないだろうか。実際、コンビニのお酒売り場をのぞくと1000円以下のワインがたくさん並んでいる。この価格帯でも「値段以上においしいワイン」を見つけることはできるのだろうか。
「コンビニに並んでいる1000円以下のワインの中から、極上のものを見つけるのは難しくはありますが、値段に比べて品質が高いものは2~3割くらいあると思います。ただ、値段が安くなればなるほど当たりの確率は低くなるので、予算内で最も高い1000円ギリギリのワインを複数試してみて、自分に合ったものを探すことをおすすめします」(同)
(文=佐藤勇馬、協力=ソムリエ/信国武洋)
信国武洋/ソムリエ
2001年単身渡仏、1992年ソムリエチャンピオンのフォールブラック氏に師事しティスティングを叩き込まれる。ミシュラン三つ星店に移籍、トゥールダルジャン本店に移籍、 ジョエル・ロブションのリニューアルに参画。日本に於けるジョエルロブショングループのエグゼクティブ・シェフソムリエとしてミシュラン三つ星を守る為にロブション氏に仕える。紹介制のワインサロン「Salon de vin Premier」オープン
提供元・Business Journal
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