VG20ETの不評と、RB20DETを積む直6Zの復活
ただし、まだ3ナンバー車の税金が高かった日本で主力となる5ナンバーZの2リッターV6ターボ「VG20ET」は、スペックこそグロス170馬力と立派だったもののフィーリング面で評価は低く、特にスポーツカー用エンジンとしては失格に近い扱いだったようです。
そこで起用されたのは決別したはずの直6エンジンで、さすがに今さら古いL型ではなく、新世代のRB20DETを搭載した「200ZR」が1985年に追加されました。
そもそもVG型は日産の今後を占う新世代エンジンとして開発したものの、直6のL型を完全に代替せず、L型後継の直6エンジンRB型を並行して使いましたが、VGとRB、あるいは古いL型やディーゼルのLD型を同車種に積むのはよくあった話。
Z31も最初からRBの搭載を考慮したと思われますし、ロングノーズのエンジンルーム内に直6が収まるのは、完全にV6専用車となったZ32以降に比べれば違和感はないように思えます。
実際にはコンパクトなVGに対し、重くて長い直6搭載はノーズヘビー傾向を強め、さらにRB20DET自体、初期には重ったるいエンジンと不評でしたが、Z31搭載にあたってセラミックターボ化などリファインを進め、市場ではおおむね好評でした。
さらに、RB20DETを積めるということは同じRBでもより大排気量・高出力版へのスワップチューンも容易になる事を意味しており、実際に名機RB26DETTへ換装したチューニングカーも多数見られます。
プラザ合意を境に一変した、ラグジュアリーZ
1986年のマイナーチェンジを境に、特に3リッター車はグラマラスなワイドボディとなってラグジュアリー化、それまでの「安くてよく走るカッコイイZカー」ではいられなくなった…画像は300ZX 2by2の後期型
さらに1985年、「プラザ合意」と呼ばれる先進国間の合意で、一方的に日本側が黒字だった日米貿易摩擦解消を意図した円高ドル安傾向が急進し、北米での価格がより高価になったZ31はラグジュアリー志向を強めていきます。
セミリトラを採用したのを除けば、2代目S130型までの「安くてよく走りカッコイイZ」という印象を残していた外観は、1986年のマイナーチェンジで肉厚のグラマラスな印象に変わり、特にワイドボディ化された3リッター車では顕著でした。
その頃の日本車は1985年を境に、マイナーチェンジやモデルチェンジで価格上昇に見合ったデザインや装備、動力性能の更新が相次ぎ、1990年代の「日本車黄金時代」へと繋がっていきますが、Z31型フェアレディZは、そのもっとも極端な例だったと言えます。
トップグレードにはついにDOHC化された3リッターのVG30DEエンジンを積む「300ZR」が追加され、不評だったVG20ET搭載車はついに廃止。
一方、北米では高価格化で従来のユーザー層は200SX/240SX(シルビア)へ移り、次世代のZ32ではより高価格・高品質化が進んだため、「俺たちのZを返せ」とばかりに、北米日産が240SXをベースに独自の次期Zコンセプトを作る事態にまで発展します。
そういう意味ではZ31の前期型、特にRB20DETを積む200ZR前期型が、「本来のフェアレディZらしいZ」として最後のモデルだった、と言えるかもしれません。
そう考えると、現在の安くて500万円以上するうえ、抽選販売で欲しくても買えない現行モデルのRZ34は一体なんなのか…ノスタルジックに浸るのにも、内外装がさほど高品質でなくともやたらと金がかかる、寂しい時代になりました。
※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。
文・MOBY編集部/提供元・MOBY
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