乗るだけで味わえる「冒険感覚」

「日産のパイクカーといえばコレ」ゆるキャン△でも話題になった“ラシーン”を産んだ名車・パオ【推し車】
都会にいながらにして、こうした冒険に繰り出すようなワクワク感を演出するのに成功したパオは、日産パイクカーで唯一ラシーンという後継車を生んだ(画像=『MOBY』より 引用)

もっとも、古のフランス製小型大衆車っぽい見た目はむしろオマケで、1980年代末の国産車からは既に消え去りかけていた「ちゃんと開く三角窓」や、フリップアウト式で下半分が内側から押し出して開けるリアクォーターウィンドウなど、レトロなギミックが満載!

その頃になると国産車でも気密重視、窓なんて開けずともエアコンで空調を整えてしまうものでしたが、昔は窓に限らずベンチレーターも多用し、走行風を取り入れて車内を通し、後席側面から排出して換気するのが当たり前。

後席に突っ張り棒でも通して洗濯物を干せばよく乾くものでしたが、パオのクルマづくりはそうした(1980年代末でさえ)「現代では失われた別な意味での快適性」を提供する意味で、コンセプト通りに乗っているだけで非日常感を味あわせてくれました。

オーディオやエアコンのスイッチも一応あるとはいえ簡素なものでしたし、日本の都市部にいても「世界のどこかで冒険に出かける際の、簡素だけど頑丈なクルマ」と思わせる演出にあふれています。

その後のレトロカーが見た目はともかく、機能的にはその時代における最新車種そのままなのに比べると、パオは非常に凝った贅沢なクルマだったと言えるでしょう。

同種のコンセプトで1994年に発売されたラシーンが2000年に生産を終えて以降、ここまで凝りまくって懐かしさの演出に励むクルマというのはそうそう登場していませんが、軽やコンパクトのクロスオーバーSUVで再現してみたら、今でも人気が出そうです。

あるいは、EV時代に自動車の白物家電化が進んだら、その時こそ「自動車ってどんな工業製品だったか思い出そう」と、再びレトロブームが来るのでしょうか。

※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。

文・MOBY編集部/提供元・MOBY

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