企業収益力の高い、低い
これはサラリーマンについて言えるが、勤務先の企業収益力が差を生み出している。
筆者の妻の弟はITエンジニアの事例だが、新卒時の年収は飛び抜けて高くはなかった。しかし、企業の業績は右肩上がりに伸びていき、また彼自身のエンジニアとしての高いスキルが評価されたことで20代で1000万円を超えた。そこからさらに伸びて今では新卒時の4倍以上になっている。東証プライム上場企業なので企業業績を調べたら、株価も業績もすさまじい伸びとなっていた。昨今、インフレに連動して賃上げが進まないニュースが賑わせているが、景気のいい話もあるようだ。
一方でインフレによるアゲインストの風に吹かれる企業もある。筆者の知る地元の酪農企業がそれにあたる。牛や牛乳を販売するまでにかかるコストはうなぎのぼり。餌や燃料の高騰で給与アップどころか、社員やパート・アルバイトにやめてもらわなければ経営が成り立たない状態である。「牛肉や牛乳は安定しているから」と親の後継ぎで酪農家になったある男性は「まさしく青天の霹靂だ」と嘆いでいた。
「サラリーマンは安定している」という話があるが、給与は安定的に受け取れるという事実は間違いない。だが、雇用主である企業と経営者は安定などしておらず、常にリスクを取って不安定な経済界を生き残っている。母体が崩れればもはや安定ではなくなってしまうのだ。だからサラリーマンでも勤務先の母体収益力は無視できない要素だ。
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かつての日本は格差が小さい社会を維持していた。悪く言えば高い能力を持った人が損をし、そうでない人には優しい社会と言える。だが現在の日本の所得格差は、すでにOECD平均(2023年2月)よりも高い水準にある。しかし、当の日本人でその認識を持っている人の割合は低い。現在の経済データ上の好景気の実感があまりないのは、まさしくその現れと言えるかもしれない。
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