アルゼンチンは自然資源に恵まれ過ぎているのが不幸

アルゼンチンには85万6300社の企業が存在する。これはブラジルやチリと比較しても企業が少ない。アルゼンチンは10万人に対して1195社、ブラジルは2219社、チリは6696社という数字になっている。アンデス山脈を背にしてアルゼンチンとチリでこうも違いがあるのは異常でもある。

ここでも一つ余談を加えたい。両国の違いは学校教育から始まっているという。チリの学校では先生が生徒に「チリは豊かな国ではないので一生懸命勉強しましょう」と教える。一方のアルゼンチンは先生が生徒に「アルゼンチンは自然資源に恵まれた豊かな国なのです」と言うのだそうだ。

この話は筆者がもうかなり以前になるが、スペイン紙「エル・パイス」で読んだ記事に記載されてあった。この記事を読んだ時に両国の経済発展の差は学校教育の段階から違いがあると指摘していた。今の日本の教育はアルゼンチンのそれに近いような気が筆者にはする。

似たようなことは隣国ウルグアイの「世界一貧しい大統領」と呼ばれていたムヒカ元大統領が「アルゼンチンの不幸は自然資源に恵まれ過ぎていることだ」と当時のマクリ大統領に指摘したことがある。アルゼンチンには鉱物資源や食糧資源などなんでも豊富にあるということ。それがアルゼンチンの不幸に繋がっているということなのである。過保護が成長しないのと同じようなことだ。

公務員の方が民間企業で働く人よりも多い

アルゼンチン企業の83%は零細企業。16.8%が中堅企業、大企業は僅か0.2%を占めているだけだ。零細企業は経済危機には弱い。しかも、アルゼンチンの問題は国営企業や公的企業に勤務する公務員が多すぎるということ。民間企業に勤める従業員が増えない。2012年の民間企業での従業員は607万2000人であったのが、10年後も606万6000人と横ばいで民間企業に伸展がないということなのである。(2022年6月26日付「チェケアド」から引用)。

その中で零細企業に勤務するひとは430万人。

それもそうであろう。何しろ、高いインフレと高金利では特に零細企業が進展する余地がない。アルゼンチン23州の内の13州では公務員の方が民間企業で働く人よりも多いという事態になっている。正に、社会主義国のようなものだ。しかも労働組合が50以上ある。物価が上がれば賃金の昇給を組合は要求する。それが受け入れられない場合はストをすることになっている。また、労働組合に所属していない労働者もいる。彼らは組合の賃金の昇給とは関係なく低い収入で生活している。

更に、大企業と中小企業の間で下請けとか言った関連企業のような繋がりがないということ。

しかも、輸出に取り組む企業が少ないというのも問題としてある。2006年から毎年平均して600社が輸出することがなくなっている。2016年だと輸出していた企業は9600社しかなかった。その内の90%近くが中堅企業の輸出である。(2017年2月19日付「ラ・ナシオン」から引用)。

だから、アルゼンチンは常に外貨が不足している。その一方で自国の通貨ペソは全く信頼性がないから誰もが米ドルを持とうとする。ところが、ドルは常に不足しているから高騰する。それがまたインフレを煽る現象となっている。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

【関連記事】
「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
大人の発達障害検査をしに行った時の話
反原発国はオーストリアに続け?
SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
強迫的に縁起をかついではいませんか?