墓参はこうして済んだのだが、高雄に来てから「済ませてしまうと、後は日本に帰るだけになってしまう」という可笑しな心境になり、実は台北への足が重かった。内湖からタクシーを使うとして、地下鉄と高鉄を乗り継いで一人で辿り着けるだろうかとの不安もあった。
10年前に在勤していた2年3ヶ月、移動はもっぱら社用車とタクシーだったせいで、地下鉄は数回、バスには確か1度だけしか乗ったことがない。タクシーの初乗りが当時70元(約200円)と安かったことも幸い(災い?)した。
が、年金生活の今は贅沢できない。地下鉄なら20〜40元で、高雄でも台北でもほぼ市内を隈なく移動できる。とはいえ、10年前は1ドル80円を切る円高、米ドル連動の台湾元は2.7円が1元だったが、超円安の今は4.8円が1元だ。
85元になっていたタクシー初乗りは約380円だから1.9倍、地下鉄最低区間は54円だったのが96円になった。対座席(指定席:左営(高雄)→台北1490元)に乗っていた台湾高鉄(新幹線)も、1445元の自由席を使えば45元(約215円)の節約になる。
こうして2日朝09:00にホテルを出発、徒歩5分の地下鉄巨蛋駅に向かう。が、巨蛋駅から高鉄左営駅までの切符の買い方が判らない。仕方がなくその辺の人に身振り手振りで聞くと、2つある20cm角ほどのパネルの左の方を指で押せと身振りでの指示。
押すと、画面上段に20-25-30と金額、下段に1-2-3と人数の表示。それぞれ20と1を押してからお金を入れると、バーコードが印刷されたレシートの様な切符が出てくる。先にお金を入れても受け入れないから、順序を知らないと途方に暮れる。
高鉄には50回以上乗ったが、10年経って全く忘れていた。エイヤと画面を押すと南港から左営までの各駅のボタンが並ぶ。台北を押したが反応がないので左営を押すと画面が切り替わる。9時46分発の対座席を押し、1490元を投入してようやく切符を手にした。
が、この度は自動改札に切符が入らない。様子を見ていた若い女性職員が近寄って来て、切符を指さす。見ると「台北→左営」と書いてあるではないか。左営で台北発の切符を買えるとは思わずに、最初に台北を押し、次に左営を押した結果の有様だった。
親切な職員は「指定席は一日満席だから自由席にせよ」と英語で言いつつ機械を操作、台北行きの自由席切符と差額45元を手渡してくれた。念のため、まだ間に合う09:46分の月台(プラットフォーム)とは別の10:00発の月台で列車の入線を待つことに。
台北に着いてからも「うろうろ」続きで、目的の地下鉄の乗るまでに30分も掛かってしまった。乗り換えを少なくしようと、台北駅から松山新店線の台北北門駅まで少し歩き、南京復興駅で文湖線に乗換えて内湖まで行こうとしたのが間違いだった。
北門駅への経路が判らず、辺りの人に聞くが、皆さん「異口同仕草」で淡水信義線の改札口を指さすだけ。改めて路線図を確かめると、淡水信義線で中山まで一駅行き、そこで松山新店線に乗換え、あとは予定した通りにすれば良いだけだった。@35元なり。
歳は取りたくないが、交渉ごとでは長年の経験が役に立った一日だった。それにしても台北を眼下に見下ろす眺望は素晴らしい。李登輝閣下は今もそこから台湾を見守っていた。

墓地から眼下に台北を望む筆者提供
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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