カーボンクレジットの基準や定義が未整備。現在多くの企業が低価格の任意市場に参加している

(中略)

信頼性の高い基準設定団体に関連するクレジットを使用しなければならない

低価格の任意市場の例は森林クレジットです。将来の乱開発予定を過大に評価するなど算出根拠が不明瞭だったり、CO2削減効果を超えて大量のクレジットが発行される事例も存在するなど詐欺まがいの行為が横行しています。国連の指摘は、詐欺まがいのクレジットを利用するのではなく、非化石証書や排出量取引など国や自治体が認める制度を利用するように、ということなのだと思われます。

ところが、国際的に信頼性が高いとされるREDD+(レッドプラス)でも過大なクレジット発行の疑いが指摘されています。

ほとんどのプロジェクトが森林破壊を有意には削減していないことがわかった。残りのプロジェクトについても、削減量は報告されているよりもはるかに少なかった。

さらにとんでもないことに、国連自身のカーボンニュートラルについてもクレジット購入による欺瞞が指摘されています。

国連が実際に行っているのは、その実質的な排出量を「相殺」するために数百万ドル相当の「炭素クレジット」を購入することである。国連の排出量を “相殺 “しているとされるプロジェクトの中には、実際に環境を破壊し、あるいは人間の健康を害しているものもある。

(中略)

国連は、2018年以来、ほぼカーボンニュートラルであると主張するために、炭素クレジットを巧みに利用している。国連が実際に排出している二酸化炭素は、「150万台のガソリン車の年間排出量にほぼ等しい」にもかかわらず。

(中略)

国連世界食糧計画(WFP)は、森林を破壊し生物多様性を損なうと非難されたブラジルの水力発電所から数千の炭素クレジットを購入した。実際、ある調査によると、この水力発電所による森林破壊は、炭素クレジットの販売を可能にするとされていた環境上の利益を帳消しにしてしまうほどであった。

信頼性が高いとされるREDD+やJ-クレジットも詐欺まがいの森林クレジットも、あらゆる炭素クレジットはみかけ上のCO2排出量が相殺されるだけで本質的には変わりありません。そしてクレジットが安価になって利用者が増えるほど実際のCO2排出量は増え、手間もお金も時間もかかる再エネへの投資や需要が減ることになります。

当然ながら企業がクレジットを購入する際には費用が伴います。心の底から環境負荷の低減を願う真の(?)ESG投資家が存在するとしたら、CO2を1グラムも減らさないのに経営上のコストアップ、利益圧迫につながるクレジット購入は株主利益に反します。

そしてその炭素クレジット購入に伴うコストアップは製品・サービスに転嫁され顧客や消費者が負担することになります。最終消費者の中には、電気代が払えず真夏や真冬にエアコンを停めて耐え忍んでいる人たちがいるのに、です。これのどこが誰一人取り残さない社会なのでしょうか。2023年以降、日本の産業界がグリーンウォッシュだらけになってしまうことを大変に危惧します。

『「脱炭素」が世界を救うの大嘘』

『メガソーラーが日本を救うの大嘘』

『SDGsの不都合な真実』

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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