「台湾有事」を抑止する在日米軍基地

仮に台湾有事になった場合は、地理的に台湾に近い沖縄の嘉手納、普天間、岩国米空軍基地、さらに原子力空母を擁する横須賀米第7艦隊、佐世保米海軍基地など、在日米軍基地の役割が決定的に重要になる。

なぜなら、天然の要害である幅130キロの台湾海峡を渡り上陸を目指す中国艦船に対しては、台湾軍による地対艦・空対艦ミサイル攻撃のほかに、圧倒的な米艦船による艦対艦ミサイル攻撃・米F15戦闘機による空対艦ミサイル攻撃、米原潜による魚雷・ミサイル攻撃などは極めて有効だからである。すなわち、「台湾有事」を抑止するのは在日米軍基地の打撃力なのである。

危険な「在日米軍出撃反対論」

ところが、一部の左翼系学者や評論家は、台湾有事に際し、日本が集団的自衛権を行使しないことを宣言すれば、米国は中国との戦争に踏み切れない(「前衛」2023年9月号渡辺治一橋大学名誉教授論文)とか、日本は米国との事前協議において、在日米軍基地からの台湾への出撃を留保すべきだ(柳沢協二元内閣官房副長官補他「政策提言:戦争を回避せよ」2022年11月)などと主張している。いわゆる「巻き込まれ反対論」である。

しかし、このような主張は、日米同盟を分裂破綻させる危険性があり、中国に誤ったメッセージを与えかねず、日米同盟の対中抑止力・対処力を低下させ、かえって中国による台湾武力侵攻を誘発する危険性が極めて大きい。なぜなら、近年軍事力を増強した中国に対しては、米軍の支援がなければ、台湾独自で台湾を防衛することが前記のとおり極めて困難であることを中国は知悉しているからである。

中国による台湾武力併合は、台湾の最先端半導体技術産業やIT産業をはじめ、2000万人を超える台湾住民を中国共産党政権の支配下に置き、台湾を大規模な軍事基地化し、中国が核心的利益と主張する尖閣諸島や沖縄本島への中国の領土的野心を増長させ、日本にとって深刻な脅威をもたらす危険性が極めて大きいと言わねばならないのである。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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