なぜサケだけ実を赤くするのか

では、サケは体表ではなく、筋肉にアスタキサンチンを蓄積させるのか。これは、産卵のために川をさかのぼることが大きな理由となっています。

遡上するには強い川の流れに逆らい、他にサケをかき分けながら進んでいかねばならないため筋肉には大変な負担がかかります。その負担を軽減させるために、抗酸化作用の強いアスタキサンチンを体表ではなく筋肉に蓄積させているのです。

また、さらに遡上すると、オスは筋肉中のアスタキサンチンを全て婚姻色に使用し、メスは卵に移動させていきます。

婚姻色が濃いほどメスとハーレムを作りやすく、卵や稚魚はアスタキサンチンの量が多いほど卵の孵化率が高くなり、稚魚の生存率も高まっていきます。だからイクラも同じようにオレンジ色をしているのです。

そして産卵を終える頃にはサケの身の色はもとに戻り白身になっています。

サーモンの身が赤い理由は【エサとアスタキサンチンの蓄積場所にあり】遡上は身に大きな負担がかかる(提供:PhotoAC)

遡上する前が一番美しく美味しい

多くのサケは身が傷つく遡上が始まる前に海で漁獲されています。これは、一番身の色が美しく、エネルギーとなる脂肪分が多いから。

秋の味覚を代表するサケは今からがまさに旬です。脂がたっぷりのった身を是非ご堪能いただければと思います。

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<近藤 俊/サカナ研究所>