証券業界で次々とビッグニュースが飛び出した。NTTドコモがマネックス証券を子会社化して証券ビジネスに参入した。みずほ証券は楽天証券と新会社を作り、楽天証券のネット顧客に対して対面営業をスタートさせる。

ネット証券大手のSBI証券を含め、顧客争奪戦が過熱するのは必至の様相だ。

こうした状況は、個人投資家にどういった影響を与えるのか。結論から言うと、顧客争奪戦の過熱は個人投資家にさまざまな恩恵を与える可能性が高い。なぜか。

証券業界で飛び出した2つのビッグニュース

まず2つのビッグニュースのサマリーをそれぞれ紹介しよう。

ニュース1:ドコモがマネックス証券を傘下に

ドコモはマネックスグループと共同出資する企業を新たに立ち上げ、その傘下にマネックス証券を置く。この新会社の出資比率はマネックスグループのほうが高いが、取締役の過半数をドコモ側が取得することから、マネックス証券は実質的にドコモの連結子会社になる。

ドコモがマネックス証券を子会社化したかったのには、単純明快な背景がある。携帯大手の中で証券会社を傘下に持っていなかったのはドコモだけで、ドコモ経済圏の拡大のために証券ビジネスの獲得を求めていたわけだ。

今後はマネックス証券にドコモのポイントサービスも導入されるとみられ、両者のタッグによる相乗効果は非常に大きいものと考えられる。

ニュース2:みずほ証券は楽天証券と新会社設立へ

一方、楽天証券に過去に出資しているみずほ証券は、楽天証券と新会社をつくることが明らかになった。新会社を通じた共同事業により、みずほ証券側は楽天証券のユーザーに対面コンサルティングを実施し、資産運用や資産承継などのサービスを展開していく計画だ。

ネット証券大手の楽天証券のユーザーは、多くが資産運用に関する対面営業を受けた経験がない。みずほ証券にとってはこうしたユーザー、中でも富裕層や中高年のユーザーに営業をかけ、じわりじわりと囲い込みを進めてビジネスの拡大につなげたいものと見られる。

個人投資家にとっては「棚ぼた」?

証券口座数で業界最大手のSBI証券が先陣を切って日本株の売買手数料をゼロにし、さらなる地盤固めに動く中、ドコモの参入やみずほ・楽天の新会社設立は、顧客の奪い合いを間違いなく加速させる。こうした動きは個人投資家にとっては「棚からぼた餅」かもしれない。

顧客獲得合戦が過熱するとき、企業はプロモーションを積極的に打ち出す。QRコード決済が日本で普及し始めた時期を思い出してほしい。LINE PayやPayPay、楽天ペイなど業界各社は高還元率のキャンペーンなどに多額を投資し、陣取り合戦を展開した。

そしてユーザーはこうしたキャンペーンが実施されていた期間、お得に買い物ができた。今後しばらくの間、証券業界でも似たような現象が起きる可能性は十分にある。