脇坂が語った収穫
試合後の囲み取材に応じた脇坂は、自軍のハイプレスについて一定の手応えを口にしている。
「相手に遠くを見させない守備が、やはり大事ですね。(本当は)スペースが空いているけど、空いているように見せないような(守り方)。これを目指しています。もっとやらないといけませんけど、(蔚山戦で)少しはできたのではと思っています」
川崎Fは相手のゴールキック以外の局面でも、蔚山のパス回しを片方のサイドへ誘導するようなプレスを徹底。これにより蔚山のパスコースを限定し、相手がロングパスを選択せざるを得ない状況を何度も作っていた。
川崎Fの決勝ゴールも、もとを辿れば途中出場のFWバフェティンビ・ゴミスが蔚山のGKチョ・ヒョヌにプレスをかけ、ロングボールを蹴らせたことで生まれたもの。この一戦に向けて磨き上げたハイプレスが、試合終盤に実を結んだ。
欲を言えば、敵陣ペナルティエリア付近や相手最終ライン近辺でボールを奪いきる回数を増やしたいところ。この試合では蔚山の苦し紛れのロングパスを回収する場面がいくつか見られたが、ハイプレスでのボール即時奪回、そこからのショートカウンター(速攻)という構図をあまり作れなかった。「ボールを保持して、得点を重ねてゲームを進めたいと思っていました」と脇坂は囲み取材で口にしていたが、これを実現するには敵陣でのプレス強度を上げたいところだ。
増えつつある守備のバリエーション
[3-1-4-2]の基本布陣で9月24日の湘南ベルマーレ戦(J1リーグ第28節)に臨むなど、戦い方の幅を広げようとしている川崎F。今回の蔚山戦もハイプレス一辺倒ではなかった。
この試合では、川崎Fが[4-1-4-1]に近い布陣で撤退する場面もちらほら。この際にホームチームの両サイドハーフが、蔚山のセンターバックからサイドバックへのパスコースを遮断するような立ち位置をとり、サイドへのパスを封じていた。
囲み取材でハイプレスへの手応えを口にした脇坂は、直近の公式戦で様々な布陣や守り方にトライしていることについて、「うまくいった部分もそうでないところも、ポジティブに捉えなければいけない」とコメント。そのうえで、川崎Fの戦術面の現状を明かしている。
「追い方(プレスのかけ方)をゲームに応じて、もっと言えば局面によって変える。これを自分たちが物にしてしまえば、(選手間の)声かけ一つで、もしくは味方のポジショニングによって『こういう追い方をしよう』という話になる。それをやっている(試行錯誤している)段階ですね」
難敵の蔚山を相手に勝利したのも然ることながら、守備のバリエーションが増えている現状で10月8日の天皇杯準決勝(アビスパ福岡戦)を迎えられるのも、川崎Fにとっては好材料と言える。昨2022シーズンを無冠で終え、今2023シーズンもJ1リーグとルヴァン杯優勝の可能性が消滅している同クラブが、天皇杯制覇に向けて弾みをつけた。