科学を否定して「お気持ち」を語る心情右翼

古来の王権を「天皇」という称号で統一したのは日本書紀で、それまでは複数の王家が離合集散していた。大王(おおきみ)は合議で選ばれたので血統には意味がなく、天皇家はウルトラマンファミリーのように日本書紀が後からつくった家系である。

推古天皇や持統天皇のような女帝も、特別な存在ではなかった。それを「男系の皇統」だというのも、中国の皇帝を模倣して後からつけた理屈である。各地に分散していた王家にそんな「皇統」が存在した根拠は(偽書に近い)日本書紀以外にない。

端的にいって万世一系の天皇などというのはフィクションであり、戦後は否定された皇国史観である。それを信じるのは自由だが、近代政党がそれを理念として掲げるのは、キリスト教政党が「天地創造」を掲げるようなもので恥ずかしい。

政治の問題がすべて科学で解決するわけではないが、科学的に嘘だと実証された話を(代表自身が嘘と認めながら)理念に掲げる心情右翼は危険である。それは科学的に成り立たない「汚染水は危険だ」という話を「お気持ち」で語る心情左翼と同じだ。

日本の野党がだめな理由は、自公政権に対して事実や論理で対抗できず、大衆の「お気持ち」を連呼するだけだからだ。そこにもう一つ右翼的な「お気持ち」を語る政党が出てきても、政治は何も変わらない。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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