対するG7は、経済成長率はときにマイナスの低い水準で推移する。さらに追い討ちをかけるのが物価高である。先行き不透明な経済に加え、暮らしに欠かせない食料やエネルギー価格の高騰は有権者の不満を著しく高め、リーダーの支持率が下がるのは当然の成り行きである。

ただ、日本に関しては、経済の現況に比して岸田首相の支持率は低すぎるのではないか。表のように、G7のなかで取立てて数値が悪いわけではない。それどころか、今年に入ってからは最も良い数値を出している。

物価についても、食料は9%余りの値上がりの一方、エネルギー価格はそれ以上に下がっている。岸田首相の経済政策は効を奏しているようにみえる。事実、海外の専門家からは日本経済を高く評価する声が上がっている(たとえば、Matthew Winkler「長期停滞を克服した日本、G7諸国の羨望の的に変身-Mウィンクラー」、Bloomberg, 2023年9月25日参照)。

それにもかかわらず、有権者の岸田氏への評価は非常に低い。何故か。

理由として、まずは数値と実態の乖離、すなわち景気が良くなっていると言われても多くの国民はそのことを実感できない、マイナンバーや直近ではインボイス制度など身近な政策に不満を抱く有権者が多いといった点が考えられる。

詳細な分析は専門家に任せるべきだが、素人の発言を許してもらえれば、有権者を強く惹きつける個性、あるいはそうした個性の演出不足のために、せっかくの成果や実績が霞み、逆に粗が目立ってしまっているように思われるのである。

実に嘆かわしいが、先進国でもドナルド・トランプやボリス・ジョンソンのようなポピュリスト的な政治家が人気を博する傾向にある。強烈な個性と過激な発言で熱狂的な支持者を獲得する一方、毛嫌いするアンチも生み出す。派手で憎めないキャラによって中立的な有権者にも食い込む。たとえ失策や逸脱行為があっても、コアの支持者が離れることはないうえ、かれらがたまに真っ当なことを言ったり、行ったりすると、意外性ゆえにアンチの有権者に「案外真面かも」などと思わせることもできる。

私自身は岸田氏の実直さ、人柄の良さ(と見えるだけ?)は嫌いではないし、ポピュリスト的パフォーマンスは御免である。だが、支持率を上げるには、「万人受け」を捨て、敵を増やすのも辞さないような「強い」リーダーを演出するのも手かもしれない。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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