そもそもこんな仕組みを今更導入するのは日本ぐらい、とされます。つまり遅れていた制度であり、ようやくそこに踏み切ったか、という点では評価されています。ではなぜ、違和感が多いのでしょうか?
2つあると思います。1つは免税業者とされる零細個人事業主が日本に非常に多く存在しているのです。街中で見かけるほとんど客が入っていなそうな店や週末だけ開く定年退職後に開店した蕎麦屋さんなど、いくらでも存在します。99.7%が中小零細企業の日本には免税業者が460万件あるとされます。大人20人に1人ぐらい免税事業者がいるのです。この対応はたやすくないし、繰り返しますが、影響があるのは免税業者ではなく、そこと取引する会社なのです。「弊社は免税業者さんとはお取引は遠慮させて頂いております」がまかり通れば「勘定奉行の酷い改定だ」との声も出てくるでしょう。
もう1つは日本人に自主的な確定申告と納税の仕組みが十分に備わっていないことがあります。これは勤め人の場合、会社が源泉徴収をして、納税もしてくれるので他からの収入がない限り「確定申告は金持ちの証」ぐらいの感じなのです。私が住むカナダでも会社が税務申告代行などしてくれませんので年が明けた2月から3月は申告を各自が否が応でもやらねばならないのです。
ただ、最近は日本でもネットで簡単にできますが、カナダでも税務申告ソフトが発達していて給与収入などは支払ったほうからの情報を基に勝手に計算、表示されるところまで進化しています。つまり自分の納税番号を入れれば自動的に「あなたの今年の年収は〇ドルでその内訳はこうですね」と一発で出るのです。銀行預金の利息も出ます。出なくて面倒なのが証券取引の損得でこれは手動で入れています。それでも税務申告とはほぼ控除の金額をインプットするだけに近いのです。日本がそこまでシステムを作り上げれば大したものでその時点でインボイス制度の仕組みが完成すると言ってもよいのでしょう。
私の日本の会社は当然ながら登録業者。様々な影響はあるため、税理士とも調整しながら試行錯誤ししながら対策を進めていくことになりそうです。大企業同士のBtoBなら問題ないのです。世の中、様々な取引が存在していることを勘定奉行はどう認識しているか、そしてその導入を間違えると起業に消極的になったり人材確保が難しくなったりする負のサイクルがあることも認識すべきでしょう。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年10月2日の記事より転載させていただきました。
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