秋の戻りガツオが美味しい季節。ふと思ったのはなぜカツオは刺し身ではなく炙り(たたき)で食べるのが主流なのか。調べてみました。

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「カツオのたたき」はなぜ「カツオの炙り」ではないのか 炙るだけでは終わらない?

戻りガツオが美味しい季節

カツオの旬は一年を通して二回あるとされ、一度目は春、そして二回目は秋だと言われています。というのもカツオは夏に向けて太平洋を北上し、夏の暑さがピークに達したころに南下してくる習性を持っています。

この北上するカツオを「上りガツオ」、南下するカツオを「戻りガツオ」と呼んでいます。この習性があるため、カツオは年に二回は漁獲する機会があり、旬が二回あるという事になっています。

カツオはエサを求めて北上するため、上りガツオはまだそれほど脂がのっておらずサッパリとした味わいをしています。

反対に戻りガツオはたくさんエサを食べてパンパンに太っているため、脂が多くノリ、濃厚な味わいがあります。

10月ごろから市場でも多く出回るため、居酒屋やスーパーでも目にする機会が増えてきます。

カツオのたたき

高知県の県魚であるカツオは、日常的に食べられている食材です。

カツオの食べ方で主流の「たたき」は高知県で生まれた食べ方で、漁師が船上で食べていたまかないだったものが一般に伝わったとされています。

保存技術のない時代、船上で鮮度が落ちたカツオを食べるために、発展した食べ方なのです。

「カツオのたたき」はなぜ「カツオの炙り」ではないのか 炙るだけでは終わらない?直火で炙る(提供:PhotoAC)

カツオのたたきは今では彩の良い洗練された料理ですが、もともとは先にも述べた通り漁師メシです。

5枚におろしてカツオの表面をサッとあぶってからスライスし、薬味を鷲づかみでドバっと乗せた豪快な漁師メシなのです。

炙りではなくなぜ「たたき」?

ここまでの話ではカツオのこの食べ方は「たたき」ではなく「炙り」になりそうではありますが、なぜ「たたき」というのか。

それは「たたき」とは、その名の通り「叩く」を意味しています。

「かつおのたたき」の調理の際には、塩やタレをかけて終わりではなく、その身を実際に叩いて味を馴染ませたことに由来するといわれています。

今となっては一つの料理として確立し洗練されているので、そこまで強く「叩く」ような調理はほとんどせず、軽く押さえるように味をなじませるのが主流ですが、この「叩く」ところにも当時の漁師の豪快さが垣間見えますね。

自宅で作ってみる場合

家庭でカツオのたたきを作ってみる場合は、表面に火を通す際はフライパンで加熱するのではなく、コンロの「直火」で焼くのがオススメです

カツオのさくに金串3~4本かフォーク2~3本を刺して、皮目を直火で炙りましょう。この際、手元が火で怖い場合は焼き網や魚焼きグリルの網を使って焼いてもOK。

皮から2mmほどの厚さまで身が白くなったら火から外して自然に冷ましましょう。身をキュッと締めたい場合は、氷水につけてもいいでしょう。

フライパンで焼くと皮はパリッと焼きにくく、身にもじんわり火が通ってしまいます。強火で一気に炙ることで皮目だけ火が通すことが出来ますよ。

「カツオのたたき」はなぜ「カツオの炙り」ではないのか 炙るだけでは終わらない?火力には注意(提供:PhotoAC)