残り試合数も1桁となり、ますます熱を帯びる2023明治安田生命J1リーグの順位争い。優勝争いでは首位ヴィッセル神戸(勝ち点55)を2位横浜F・マリノス(勝ち点54)、3位浦和レッズ(勝ち点49)、4位名古屋グランパス(勝ち点47)が僅差で追う展開で勝敗の行方はまだまだ分からない。
一方、残留争いに目を向けると、最下位湘南ベルマーレと勝ち点6差以内にはわずかに2チーム(柏レイソル、横浜FC)。現時点では、この3チームからJ2降格が出る可能性が高い。来シーズンより各リーグのクラブ数が変わることに伴い、今季J2へ降格するのは1チームのみ。そんなレギュレーションなだけに、ここから先は下位3チームを中心に文字通りプライドと生き残りをかけた戦いになることだろう。
ここでは、第28節終了時点で危険な順位にいる3チームの展望について、夏の補強や今後のキーマンも含めて見ていこう。
柏レイソル(第28節終了時点16位)
キーマン:MFマテウス・サヴィオ
昨2022シーズンは後半に失速したものの7位と1桁順位でシーズンを終えた柏レイソル。しかし、今季は開幕から勝ち星を挙げられない期間が続き、ようやく初勝利を挙げたのは4月9日の第7節だった(対鹿島アントラーズ1-0)。その後もなかなか勝利を得られず、5月には長くチームを率いてきたネルシーニョ監督を解任。井原正巳コーチが監督へと昇格しここまでを戦ってきた。
今夏の移籍では、過去に清水エスパルスや鹿島アントラーズで守備の中核を担ったDF犬飼智也を期限付きで獲得。ゴール前での身体を張ったブロックなど、早くもベテランらしく頼もしい働きを見せている。複数得点がなかなか奪えず打ち合いでは負けてきた今季の柏にとって、犬飼の加入により守備に1本確固たる軸ができたことは大きい。しかし、残留に向けて他クラブも意気を揚げて白星を掴みに来る中、同じように勝利を求めていくにはやはり攻撃面の改善は不可欠。
それを思えば、夏にMF山田雄士が期限付きから復帰したものの、即戦力となる攻撃的な選手を獲得しなかったことには疑問が残る。とはいえ、U-23日本代表のFW細谷真大や冬に柏へ加わった新戦力のFWフロートなど実力者が揃っていることから、彼らが正常に機能するのであれば問題ないことも事実。そして、そんな攻撃陣の活性化のカギを握るのがMFマテウス・サヴィオだ。
その高い技術と豊富なアイデアで柏の攻撃を牽引してきたが、ここまでは残念ながら迫力ある攻撃場面を作るには至らなかった。今夏の補強で守備の安定が図れたからこそ、改めて90分間の献身性と豊富な運動量を誇るサヴィオを軸に、より前線のタレントが活きる攻撃を作れるかがJ1残留に繋がることは間違いない。残る6つの対戦カードの中には、浦和レッズや名古屋グランパスといった堅守を誇るチームとの試合もある。現在16位の柏。最下位の湘南ベルマーレとは勝ち点差5で安全地帯にいるように見えるが、攻撃を組み上げきれずに勝ち点を取りこぼすようであれば、下位に飲まれる可能性は低くない。