お金があっても経験貧乏になる
資金力があるからといって経験リッチになれるわけではないし、逆にお金を追い求めすぎると経験貧乏になるケースすらあると思っている。
たとえばクライアントワークのフリーランサーや、出世を意識して猛烈に仕事に打ち込むサラリーマンの中には「合理主義一辺倒」になってしまうことで、お金を得る代わりに他の体験機会のすべてを放り出している状態の人は意外と多いのではないだろうか。
実際に筆者の親族には年収1000万円超で仕事を優先する人がいる。子供を二人授かっても育児にはほぼまったく参加せず、会社に泊まり込む日が続いて無精ひげが伸びて帰宅した結果、父親ではなく不審者と間違われて子供に泣かれるということがあったようである。
自分はえらそうに人の生き方に講釈垂れることができるほど大物ではないし、人生はその人のものである。だが仕事を優先して実績とスキルとお金が手元に残っても、家族との時間や余暇の体験など何も蓄積しなければ、経験貧乏になってしまわないだろうかと思う。「経験」とは仕事に限った話ではないのだ。
そして経験格差の問題となるのは、加齢による意欲と体力の限界である。デスクワークばかりで家と会社の往復生活が続くと、旅行にいこうとか家族でゆったり時間を過ごそうとか文化的な知的シャワーを浴びようという意欲はどうしても減退するし体力も落ちてくる。そうなれば「今は忙しいから後で」で先送りになってしまい、いざ余暇の時間を得た時には一緒に楽しさを分かち合う相手も、意欲も体力も尽き果ててしまうということが起こり得る。経済格差は回避できても、経験格差がついてしまうわけだ。
年を取って経験貧乏になると、そこから巻き返して経験リッチになることは難しい。若い感受性の間にしか楽しめない経験はあまりにも多い。
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40代、50代になると仕事の脂が乗って仕事優先になりがちで、体力の衰えもあって新たな体験をしようという意欲も衰えていく。そうなると日常のルーティン外の体験が何も蓄積しないままあっという間に何年、何十年と経過してしまう。手元に資金力がある・ないは関係がないとは言わないが、決定的な要因でもない。経験貧乏の怖いところは、遅効性で後から気づくという点にある。仕事が面白くなる、責任が重くなるタイミングで仕事以外の経験リッチになろうと考える余裕がない場合も多いと思うが、人生は一度きりだ。仕事以外にも積極的に経験を取りに行くことを勧めたい。
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