稀に一発逆転できることもないわけではないですが、まず厳しいと考えるべきです。それよりは、既存の得意分野でほかに打てる手はないかと考えたほうが現実的な可能性があります。
とはいえ、まだ諦めたわけじゃないということはわかります。このあたりが分岐点になるわけですが、追い詰められた社長がどういう心理なのか、考えてみましょう。
「潰れそうな会社の社長」の心理を考える業績が悪くなれば、当然自分の会社ですから、社長はなんとかしようとします。それこそ金策に走る、事業の立て直しをする、できる限りのことをしようとします。そもそも社長をやるくらいですから、メンタルは決して弱くない。いや、むしろ強い。だからこそ、ギリギリまで頑張ります。
しかしながら、社長も人間です。毎月の支払い督促に耐え、取引先に頭を下げ……耐え忍んで会社を立て直そうと踏ん張ります。
でも、業績が改善しなければ、どこかで心折れる瞬間がやってきます。これは社長によりますが、お金がなくなったとき、信頼していた社員が会社を見限って辞めたとき、主要な取り引きを打ち切られたとき。様々な出来事がトリガーになるのです。
そして、そのトリガーが引かれてしまえば、社長は段階的に変わっていきます。
まずは混乱期を迎えます。
普段は取り扱わないような事業に手を付けたり、付き合わない人たちとの交流が始まったりします。通常の社長なら信じないような儲け話も信じ込んでしまいます。このあたりは「いや、さすがにそんな話信じないでしょ……」と思われるかもしれません。
しかし、ある種この時期は「洗脳状態」とも言えます。正常な判断が徐々にできなくなるのです。そして最後。張り詰めた糸が切れるかのごとく、「被害を最小限にして終わらせよう」という心理になっていきます。
そうすると、最後に少しでもお金を残すために自社の売却を考えたりとか、社長の個人資産を守るために奔走したりとか、自分のことしか考えられなくなるのです。そういう意味では、社長の言動がどの方向に向かっているかをきちんと認識するのも、危険なシグナルを察知するひとつの方法でしょう。
あくまで会社の立て直しに向かっているのか、それとももう終わりに向かっているのか。こういう社長の心理は、知っておくべきです。
■
横須賀 輝尚 パワーコンテンツジャパン(株)代表取締役 WORKtheMAGICON行政書士法人代表 特定行政書士 1979年、埼玉県行田市生まれ。専修大学法学部在学中に行政書士資格に合格。2003年、23歳で行政書士事務所を開設・独立。2007年、士業向けの経営スクール『経営天才塾』(現:LEGAL BACKS)をスタートさせ創設以来全国のべ1,700人以上が参加。著書に『資格起業家になる! 成功する「超高収益ビジネスモデル」のつくり方』(日本実業出版社)、『お母さん、明日からぼくの会社はなくなります』(角川フォレスタ)、『士業を極める技術』(日本能率協会マネジメントセンター)、他多数。 会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業 | 横須賀輝尚
「会社を潰してしまう社長は、アートが好き」は本当か?(横須賀 輝尚 経営者) ChatGPT(GPT-4)は、弁護士や税理士など士業・専門家の相談業務を奪うのか?(横須賀 輝尚 経営者) コロナ禍で露呈した「使える士業」と「使えない士業」の決定的な違い(横須賀 輝尚 経営者) コロナ5類移行で外国人労働者の争奪戦が始まる(小島 健太郎 行政書士) ママ社労士が教える、育休明けからスムーズに職場復帰する方法。(桐生 由紀 社会保険労務士) 過去最高の税収68兆円より社会保険料が多い理由。(中嶋 よしふみ FP)
編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2023年9月26日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
【関連記事】
・「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
・大人の発達障害検査をしに行った時の話
・反原発国はオーストリアに続け?
・SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
・強迫的に縁起をかついではいませんか?