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社長たるもの、メンタルは基本的に強い人が多いといえます。ですから、会社が少し傾いたくらいでは、なかなか挫けません。金策に走り、営業に走り、最後まで会社の継続のため尽力しますが、どこかで糸が切れます。
「倒産の心理的トリガー」とでも言うべきもので、いったい社長はどんなときに心が折れそうになるのでしょうか。
「個人資産を売却したりと、倒産が見えていても意外と社長はしぶとく耐える。しかし、倒産の心理的トリガーが引かれると、途端に会社をたたむ方向に舵を切り出す」と言うのは経営コンサルタントの横須賀輝尚氏。今回は、横須賀氏の著書「プロが教える潰れる会社のシグナル」より、再構成してお届けします。
社長自身の所有する不動産、高級車の名義変更の話が出たり、実際に名義変更が行われていた場合は要注意です。
社長は会社の借り入れの連帯保証人になることがほとんどですから、破産となれば資産は基本的にすべて持っていかれます。そのため、会社が傾き始めたときに、不動産や自動車の名義を自分ではなく配偶者の名義にして、資産隠しをしようとするわけです。
ですから、こうした動きが出てくるような場合は注意。不動産の名義を変える手続きをするのは司法書士。自動車は行政書士。突然、こういう専門家が会社を訪れるのも、ひとつのシグナルかもしれません。
まあ、実際のところでいうと、会社が傾き始めた頃に行われた名義変更、資産隠しは合理的な理由がなければ、破産手続きの過程で破産管財人に否認されてしまいます。言い方は悪いですが、無駄な足掻きなわけです。
じゃあ、離婚してしまえばどうなんだ? と思われると思いますが、それも本当に適切な離婚に伴う財産分与と評価されれば別ですが、まあよほどのことがない限り、否認されてしまうのです。
新規事業に手を出す、資格を取り始める既存事業が上手くいかなくなったら、なにか一発逆転を狙って新しいことに手を出そうと考えます。この段階では、まだ諦めたわけではありません。新規事業を始めるために、何かの代理店に加盟したり、何か資格の認定を受けたりして、新しいことでなんとか会社を立て直したい。可能性を追っているわけです。
しかし、私のコンサルタントとしての経験上、窮地に新しいことをやって上手くいく例はあまり多くありません。
そもそも会社とは、社長の得意分野から始めていることがほとんどなわけです。そういう意味では、新規事業はやったことのない分野であることがほとんど。場合によっては不得意な分野になることもあるわけで、勝てる戦には到底見えません。