選挙戦では各政党は選挙プログラムを発表する。有権者はその公約をみて投票する。ドイツのショルツ政権は2021年12月8日、社会民主党(SPD)、緑の党、自由民主党(FDP)の3党から成る連立政権を発足させたが、それに先立ち、3党は同年11月24日に合意した連立協定(178頁)を公表し、任期の4年間で優先して取り組む政治課題をまとめた。

日伊首脳会談の臨むメローニ首相(2023年5月18日、G7広島サミットで、首相官邸公式サイトから)

そのショルツ連立政権は発足から中間点に差し迫ってきた。ショルツ首相は8月末、「3党連立政権は政権発足以来、既に公約の半分以上を実施した」と豪語し、メディアの世論調査では支持率が低迷な連立政権だが、実際は「実行する政権だ」とアピールした。例えば、ショルツ政権は脱原発政策を今年4月に成就し、大麻の部分的解除を実施したばかりだ。

イタリアではジョルジャ・メローニ首相の率いる極右政党「イタリアの同胞」を中心とした右派連立政権が発足して9月22日で1年目を迎えた。ところで、メローニ首相の与党「イタリアの同胞」は選挙戦では反欧州連合(EU)政策、難民殺到防止に海上封鎖を主張、外交ではロシア寄りの姿勢をみせ、多文化主義には反対し、左翼的文化価値観に対して厳しく批判してきたが、政権発足後、親EU政策を展開させる一方、難民対策でもEUと連携してチュニジアと難民対策で協調するなど、選挙前の強硬な政治路線は巧みに修正されてきている(「チュニジアは“第2のトルコ”に」2023年7月18日参考)。

対EU政策でも、「わが国はこれまでドイツやフランスの利益を支持するだけで終わり、わが国のアイデンティティを擁護する姿勢が乏しかった。巨大な債務、低賃金、難民問題、これらの問題に対してわが国の指導者は欧州が悪いからだと説明してきた。しかしイタリアに必要なものは本当の愛国心だ。わが国を守る精神だ」と主張してきた。そのメローニ首相はここにきてEUとの協調政策を模索し出している。

メローニ女史は2012年にネオファシズム政党と呼ばれる「同胞」(Fratelli d’Italia)を結成し、14年に党首に就任。10年前の選挙では得票率1・96%に過ぎなかったが、昨年9月の総選挙で26%を獲得した。

メローニ首相は1996年、「イタリアの独裁者ベニート・ムッソリーニはいい指導者だった」と堂々と語るなど、ネオファシストと受け取られた。メローニ氏が首相になった時、バイデン米大統領は「イタリアの民主主義が後退する」と懸念を表明していたほどだ。そのバイデン大統領は7月末、ホワイトハウスでメローニ首相と会談し、「われわれは友達になった」と言っている。

ロシア寄りだったメローニ首相はウクライナ戦争勃発後、ウクライナを支援するなど欧米諸国と歩調を合わせ、北大西洋条約機構(NATO)加盟国からも人気を呼んでいる。また、対中政策では、イタリアは2019年に中国の習近平国家主席が提唱した新シルクロード「一帯一路」にG7メンバーとして初めて参加したが、米国などから非難を受けてきた。しかし、クロセット国防相は7月30日、「同プロジェクトには失望した」と表明するなど、メローニ政権は「一帯一路」からの離脱を検討中といわれる。メディア情報によると、「12月までに決断する」という。