国産エンジンで可変バルブ機構の老舗、三菱による「MIVEC」
1970年代に排ガス規制や省エネ志向といった環境対策で、一度はすっかり廃れた国産車の高性能エンジンですが、1970年代末にターボチャージャーが実用化されるとしぶとく生き延びたDOHCと合流してDOHCターボとなり、手軽な高性能エンジンとなります。
しかし、制御が未熟だった当時の「どっかんターボ」は自然に盛り上がるようなフィーリングが得られないと敬遠されがちで、自然吸気エンジンを高回転でブン回して馬力を稼ぎたいというユーザーも多く…しかし低回転トルクのスカスカも実用エンジンとしては困りもの。
そこで登場したのが、吸排気バルブの開閉タイミングやリフト量を制御し、高回転域の高出力と低回転での実用トルクを両立した可変バルブ機構。
1980年代に登場し、1990年代にはリッター100馬力超えを当たり前にしたこの技術から、今回は可変バルブ機構の老舗、三菱の「MIVEC(マイベック)」と、その搭載車を紹介します。
ホンダVTECと対をなすような存在だった、三菱MIVEC
そもそも三菱は1980年代前半、既に気筒休止や開閉する吸気バルブ数を制御する初期の可変バルブ機構を実現し、吸気バルブ数を低速で1、高速で2に増やし、状況によって1気筒2バルブにも3バルブにもなる「シリウスDASH3×2」を開発しました。
これを2リッターSOHC・インタークーラーターボのG63B(後の4G63)に採用してスタリオンに搭載、グロス200馬力/ネット170馬力は1984年当時なら優秀で、日産 スカイラインRSの2リッターDOHC16バルブ・インタークーラーターボ(グロス205馬力)と同格。
他にも三菱は軽自動車用の直列3気筒3G8型や、同4A3型で1気筒5バルブを実現するなど、ユニークなエンジン開発をしていましたが、1989年に登場して自然吸気でリッター100馬力を実現した、ホンダB16Aエンジンの可変バルブ機構「DOHC VTEC」には出遅れました。
さらに、機械制御で吸気バルブの開閉タイミングを2段階可変にしただけで(可変バルブ機構以外にもいろいろありますが)4A-GEをリッター100馬力に引き上げた、トヨタの「VVT」にも出遅れ…1992年10月にようやく三菱「MIVEC」を採用した4G92誕生。
その頃に話題となったのは世界最小のV6エンジン、1.6リッターの6A10でしたが、そんな部品点数が多くて高コスト、いくら静粛性に優れ滑らかに回っても、搭載車がただの大衆車では車格が負けて無意味なV6エンジンより、やるべきことがあった気がします。
実際、MIVEC版4G92が175馬力を叩き出してからは、主な搭載車となったミラージュ(ハッチバック)/ミラージュアスティ(2ドアクーペ)がシビックの好敵手となり、テンロクスポーツ戦線は「ホンダVTEC vs 三菱MIVEC」となりました。