それがステーブルコインと称するものです。これは発行する仮想通貨の量に見合った政府通貨などを担保として持っていることが前提になります。今でも仮想通貨にステーブルコインと称するものはあるのですが、その担保が怪しかったこともあり、ステーブルではなくなったものも存在します。

今回、その発行を試みているのが日本のメガバンクで当初計画より大幅に遅れましたが、来年にも登場しそうな勢いです。主体は三菱UFJでみずほ、三井住友はそれに乗っかる感じでしょうか?今後、煮詰まれば3社でスタートし、徐々に他の銀行も交えた形になるのでしょう。

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今年の春、みずほはLINE銀行計画から撤退し、幻の案件となりました。双方いろいろ問題があったことも事実ですが、フィンテックの世界が目まぐるしく進化する中でみずほが銀行主導のステーブルコインに舵を切ったからではないか、とみるほうが正しい気がするのです。

確かに当時はQR決済が花形のように言われ、事業会社は必死のマーケティングを展開していました。まるでQR決済が今後の支払いのデファクトスタンダードになると言わんばかりでした。確かにQR決済は新しいし、スマホをピッとやれば払えるなんておしゃれです。ですが、いまや、クレカでもスマホピッで払えます。それにQRを出すのが面倒な場合もあるのです。更に店側は決済の費用が掛かるし、各社別の端末なのでレジの前は端末だらけで実に見苦しいわけです。

ここでメガバンクの打ち出すステーブルコインは通常の決済のみならず貿易決済に使えそうだという点が極めて重要なのです。現在、海外送金はSWIFTという決済システムを介して行われます。この前近代的な送金の仕組みは今、お金が何処にあるか分からず、事故も生じるし、決済コストが高いのです。ステーブルコインになればSWIFTがいらなくなる、これは画期的です。そして送金のコストも極めて安く、送金は瞬時に完了します。これは貿易決済の世界に於いて革命的と言ってよいでしょう。

個人的にはメガバンクが発行するステーブルコインは第二幕で、これも幕間つなぎだとみています。最終兵器は中央銀行が発行するデジタル通貨でこれが出来れば世の中の決済は激変します。まず、銀行ビジネスが激変します。駅前一等地に銀行は不要でどこかのビルの上の方に入っていればよいことになります。給与はスマホのアプリに直接入り、支払いもスマホでします。銀行がそこでは介在しません。よってメガバンクのビジネスはともかくリテールバンクは厳しい将来が待っていることになります。

現在のQR決済業界だこれから激変時代を迎えるわけで個人的には民間のQR決済は1-2社を除き無くなるとみています。結局、金融を扱うのは政府の意向を汲んだ大手が主流ということになるのでしょう。いつの話ですかね、と聞かれたら30年代初頭にはそうなっていると予想しています。

では今日はこのぐらいで。

編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年9月25日の記事より転載させていただきました。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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