高雄で迎えた9月21日の朝、突如スマホがけたたましく鳴り、警戒音と共に女性が中国語で何かを繰り返し喋っている。「中国軍の状況が異常」との現地紙報道もあり一瞬身構えたが、どうやら何かの演習と判り胸をなで下ろす。
調べると9月21日は台湾の「国家防災の日」、9時21分に「強震警報システム」の警報を鳴らすとある。日本の「防災の日」も9月1日だから、9月は日本でも台湾でも「防災の月」ということになる。

防災訓練を視察する蔡英文総統 総統府HPより
99年9月21日午前1時47分に起きた南投県集集鎮を震源地とするマグニチュード7.3の大地震では、2,500人に上る犠牲者が出た。総統府は翌年、「防災の知識や意識を生活に取り入れる」目的で9月21日を「国家防災の日」とした。
蔡英文総統はこの日、朝から国立新竹特別支援学校を訪れて「民国112年度 国家防災の日-各級学校と幼稚園の地震避難訓練」を視察、警報が鳴ると生徒に安全対策を指導した。
次に新竹市内で行われた防災イベントに出席した総統は、「国家レベルの災害医療救護隊」の訓練や救援活動、民間団体の緊急対応チームによる訓練などを視察、各県市や国際救援隊のチームそれぞれのブースを訪れて、隊員らを労った。
今年の訓練では、海外19ヵ国との「国際協力と訓練枠組み」を初めて取り入れた。国内の救助能力の検証だけでなく、国家間の災害救援に備えて、台本なしで状況に対応する能力を強化する新しい「国土安全保障演習評価プログラム」だ。
加えて、「ギフテッド」のオードリー・タンがデジタル大臣を務める、IT先進国・電子立国の台湾らしく、ドローンを使ってリアルタイムでライブ画像を送信し、3Dモデリングを作成するなどの最新技術を駆使した訓練も行われた。
新竹から台南に移動した総統は、中華民国軍、内政部空中勤務総隊(ヘリコプター隊)、内政部消防署、各地方自治体のレスキュー隊、そして民間防災団体が一体となって救助訓練を行う「大規模震災消防救災動員演練」を視察した。
■
日本の「防災の日」9月1日も関東大震災が起きた日だ。ちょうど百年前のその日昼時、マグニチュード7.9の大地震が南関東を揺らした。10万5千人に上る死者・行方不明者が出た。だが、日台の「防災の日」制定のタイミングはかなり違っている。
台湾の「国家防災の日」制定は大地震の翌年だったが、日本の「防災の日」は、大震災から37年経った60年6月に制定された。東京消防庁「消防雑学事典」の「防災の日と二百十日」は、その辺りの経緯をこう書いている。
<要旨>
暦の上で9月1日は「二百十日」、ちょうど台風シーズンを迎える時期で、59年9月26日の「伊勢湾台風」では、全半壊・流失家屋約15万4千戸、浸水家屋約36万4千戸、死者・行方不明5.1千人、負傷者3万9千人という戦後最大の被害を出した。これが契機となり、翌60年に地震や風水害等に対する心構えを育成するため「防災の日」が創設された。
雑学事典らしく豆知識も載っている。(以下、太字は筆者)
「防災」とはどんな言葉の意味を持っているのでしょうか。広辞苑には、「災害を防止すること」と簡記されていますが、災害対策基本法では、「災害を未然に防止し、災害が発生した場合における被害の拡大を防ぎ、及び災害の復旧を図ることをいう」(第二条第二号)と定義しています。
■