2.集団解雇に対する雇用保護
まず集団解雇についての雇用保護指標を見てみましょう。

図1 雇用保護指標 一般労働者 集団解雇 2019年OECD統計データより
図1が雇用保護指標のうち一般労働者の集団解雇(Collective dismissals)についての比較です。集団解雇は、1カ月に数名程度の規模と定義されているようです。
日本は2.04で、OECD平均値(2.44)を下回り、フランス(3.25)、イタリア(3.19)、ドイツ(2.61)、韓国(2.33)、イギリス(2.31)を下回ります。
雇用保護でイギリスを下回るのは珍しいですね。
日本では集団解雇に対する規制がかなり緩いという事になりそうです。
また、OECDのサイト中では、個別解雇の場合との比較もされていますが、個別解雇の指数と集団解雇の指数には強い関係があるようです。
3. 大量解雇に対する雇用保護OECDでは、集団解雇だけでなく大量解雇(Mass dismissals)についても指数が公開されています。
大量解雇は、1カ月に120人以上の規模と定義されています。

図2 雇用保護指標 一般労働者 大量解雇 2019年OECD統計データより
図2が大量解雇に対する雇用保護指標となります。
集団解雇とそれほど傾向は変わりません。
ドイツがやや厳しくなる方向に、韓国がやや緩くなる方向に相対的な順位が変わっている程度ですね。
やはり、主要先進国では、フランス、イタリア、ドイツが厳しく、日本、カナダ、アメリカが緩いという評価になるようです。
4. 総合的な雇用保護指標最後に、個別解雇と集団解雇の指数を合算した雇用保護指標の総合指数について比較してみましょう。

図3 雇用保護指標 一般労働者 2019年OECD統計データより
図3が雇用保護指標の総合指数となります。
個別解雇と集団解雇で重みづけした数値を合算しているとの事です。
一般労働者への雇用保護の総合評価となります。
最も厳しいのはチェコで3.03、最も緩いのはアメリカで1.31となります。
OECDの平均値は2.31です
イタリア(2.86)、フランス(2.68)はかなり雇用保護が厳しい国、韓国(2.37)、ドイツ(2.33)は平均的~やや厳しい国と言えそうです。
日本は2.08で平均値を大きく下回りますので、雇用保護が緩い国の部類に入りそうです。
日本より緩いのはイギリス(1.90)、カナダ(1.68)、アメリカ(1.31)などですね。
5. 雇用保護の特徴今回は雇用保護について、集団・大量解雇の指数と、総合指数をご紹介しました。
日本は集団・大量解雇の場合も、個別解雇との総合で見ても相対的に雇用保護の弱い国と言えそうです。
日本より緩い国は、イギリス、アメリカ、カナダです。
一方欧州各国の主要国フランス、ドイツ、イタリアは雇用保護が厳しい国となります。
欧米として一括りにされがちですが、ずいぶんと傾向が異なるのが興味深いですね。
日本はアメリカやカナダ寄りで、先進国の中では雇用保護が弱いという事に意外と感じた方も多いのではないでしょうか。
皆さんはどのように考えますか?
編集部より:この記事は株式会社小川製作所 小川製作所ブログ 2023年9月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「小川製作所ブログ:日本の経済統計と転換点」をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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