日本で「ウーバーする?」がいよいよ実現する気配となってきました。引き金はタクシーがつかまらないこと。運転手の高齢化と減少はタクシー会社にとって切実かもしれませんが、顧客の方がもっと困るのです。過疎地帯では白タクは既にOKになっている中、ライドシェアはその解釈を拡大するだけ。世界一難関なロンドンのタクシー免許の試験をクリアするよりナビの方が正しく、早く着くので運転手はその指示に従えばよいだけ。ただ、日本はへんな事件が多いのでそれだけが心配です。

では今週のつぶやきをお送りします。

中銀ウィーク、結局どこも据え置き

日本、アメリカ、英国の政策決定会合は全て「据え置き」となりました。英国の事前予想は更なる利上げでしたのでやや意外感。アメリカのインフレと利上げの連関性に個人的には疑問がついているのですが、パウエル氏はもう一回ぐらい利上げをしたいという含みを残しました。そして注目の日本は植田日銀総裁が現状維持としました。三つの中銀に共通しているのは「上げたいけれど、ここは我慢」でしょう。

インフレが止まらない英国が利上げを踏みとどまったのは国内経済への悪影響が懸念されるからです。アメリカは過去の利上げ局面をグラフで見ると一目でわかるのですが、金利上昇局面では急激な引き上げを行い、やり過ぎて経済とのバランスを壊し、長期下落させるパタンが続きます。パウエル氏はこのFRBの歴史的悪癖に気がついていないのか、いまだに「インフレの根を絶やす」と頑なですが、経済の芽も刈り取りつつあるように見えます。

では植田総裁はどうでしょうか?やり取りが典型的な学者スタンスで論理的表現であり語彙を巧みに駆使した歪曲表現ではありません。グリーンスパン氏がFRB議長だった時は氏の発言が芸術的ともいえる表現力で解釈が難解、記者はクイズのように悩まされました。今回、植田氏は「政策修正時期の決め打ちは到底できない」と述べています。これは超平易な表現で「金利はいつかは正常化させるけれどその具体的タイミングと手順はまだ述べられない」です。物価上昇の安定性が分析できないというのが真意ですが、たぶん真意は「前回、YCCの変動幅を広げたばかりだからその影響がデータで見え始める次回まで待ちなよ」ではないかとみています。

世界が軋む、不協和音の向かうところ

ポーランドとウクライナの関係が急速に冷えています。このブログでもこの件は既に指摘していますが、国連会議でポーランド首相が「わが国はウクライナにこれ以上武器を供与しない。ポーランドの武器の近代化を進めるからだ」と述べ、その後、同国大統領が火消しに躍起でした。ポーランドのウクライナからの穀物輸入禁止が既に発表されており、年明けには難民受け入れも停止する予定。この想定外の展開にアメリカは武器輸出に対して今まで以上に慎重にならざるを得ず、ゼレンスキー氏の訪米クレクレ外交は大逆流の感があります。

カナダではシーク派のリーダーがBC州で殺害された件でカナダ政府はインドの諜報部隊による殺人と断定、これに対してインドが猛反発し、カナダ人へのビザ発給を止めてしまいました。トルドー首相の外交は下手で以前、習近平氏から公衆の面前で強烈にクレームされたり、その昔はG7会談後、余計な一言がトランプ氏を激怒させ、それ以降、両氏の間柄は修正できなくなった事件もありました。トルドー氏の鈍感さもあるのですが、世界中で外交が軋んでおり、センシティブになっていると言ってよいでしょう。多分、カナダの情報筋は正しく、シーク派のリーダーは政治的に抹殺されたとみていますが、カナダ側が正面切って述べたことでインドの顔に泥を塗り、両国間の関係が短期間で極めて悪化する事態になりました。

大戦後78年も平和な社会が続きましたが、世界各地で広がる些細なもめごとは着実に増えてきています。両大戦は陣営化した戦いですが、今でも陣営化はするけれど個々の国の言い分がそれに勝り、自分が何かに巻き込まれたら徹底して対抗する傾向が強まっています。一言で言えば「バラバラになる世界」でしょう。結局、人類は「仲良しこよし」で国際会議で笑顔で握手をし、コミュニケーションを取っているように見せますが、利害に関しては妥協が出来ず、メンツが邪魔して落としどころが見いだせないそんな外交が各地で展開されています。ずいぶん水臭く、そしてきな臭くなったものです。