日本人の持つお金が投資に廻らないという90年代からの問題をどうにかしてこじ開けたいというわけなのでしょう。では一体2000兆円の資産ってどこに寝ているのでしょうか?まず、半分の1100兆円が現金、550兆円が年金、保険です。年金と保険は見えない資産で個人には何とも致し方ない部分。そうすると残り1100兆円の現金に着目されるのですが、多くの方は「えー!?」と答えるでしょう。事実、その7割は60代以上の方に偏っています。

また「日本人は資産持ち」とよく言われますが、その資産の多くは自宅の土地建物といった不動産です。なので死ぬまでその不動産を手放すことはなく、その後、ご家族が相続税を払う現金がなく、泣く泣く土地の一部を手放したという話はごまんと転がっています。つまり計算上は皆さん、結構お持ちなのですが、「住む家は別腹よ」ということです。また金融資産という発想も自宅など住むところを入れない残りの資産というのが定義です。

日本人の持つ1100兆円の資産運用ですが、仮に一定比率でも株式市場に入り込めば株価へのインパクトは大きくなります。が、日本の資産運用は東証の区分改革がむしろ逆効果になった部分があるのです。それは小型株や新興企業が主体のスタンダードやグロース市場が蚊帳の外になってしまい、マネーの多くがプライムを目指すのです。本来、スタートアップを含む企業支援が結局、大企業本位の投資スタンスになってしまった、というのが私のみる東京市場のいびつさです。

アメリカを見ると成長著しい企業が上場するナスダックにはアメリカを代表するテック株がずらり並び、「上場するならNY証券取引所かナスダック」という企業側の選択があるのに日本はいわゆるアメリカのような並列二本立てではなく、垂直型ランク付けにしたのです。これは後々、東証が頭痛を抱えるネタになるはずです。

日本ではマネーの話は「降っては消え」を繰り返しています。金利がほとんどなくても普通預金が一番という「ノーリスク ノーリターン」が一番ね、とセロトニンが少ない日本人はうってつけなのです。「安心安全」って小池さんも口癖のように言うでしょう。ならば国際金融都市東京なんてそもそも小池さんの感性とは全く相いれないものだということなのです。

では今日はこのぐらいで。

編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年9月22日の記事より転載させていただきました。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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