「緑の党」は、ロシア軍のウクライナ侵攻(2022年2月24日)以来、従来の平和政党の看板を下ろし、ウクライナへの武器供与を積極的に支持、過去の対ロシア関与政策の見直し、厳格な対中政策などを実施してきた。ベアボック外相は、「SPD主導の過去の対ロシア、対中国政策を2度と繰り返すべきではない。その外交路線はドイツをロシア、中国に依存させる結果となり、わが国を恐喝することを可能にさせてきた」と発言しているほどだ。
ドイツの対中国政策では、FDP党首のリンドナー財務相も厳しい。同財務相は4月末に開催された党大会で、「ドイツ経済は中国からの経済的自立を推進していかなければならない」と指摘し、ドイツ政府の過去の中国政策を「間違いだった」とはっきり述べている(ドイツ民間ニュース専門局ntv)。そのこともあってか、5月開催予定のドイツ・中国間の政府間協議が延期されたことがあった(「リンドナー独財務相の『中国体験談』」2023年5月10日参考)。
ちなみに、FDP所属のシュタルク=ワッツィンガー連邦教育・研究相が3月21日、ドイツ連邦政府メンバーとして1997年以来26年ぶりに台湾を訪問した。駐独中国大使館は当時、「国家主権と領土保全、そして中国の核心的利益を守るという中国の決意を過小評価してはならない」と警告を発したほどだ(ドイツ連邦議員団が昨年秋、既に台湾を訪問している)。
ドイツは輸出大国であり、中国はドイツにとって最大の貿易相手国だ。例えば、ドイツの主要産業、自動車製造業ではドイツ車の3分の1が中国で販売されている。2019年、フォルクスワーゲン(VW)は中国で車両の40%近くを販売し、メルセデスベンツは約70万台の乗用車を販売している。昨年第4四半期以来、マイナス成長を続けるドイツ国民経済は目下、リセッション(景気後退)にある。それだけに、中国側がベアボック外相の発言を受けて、ドイツに対して経済制裁のカードをチラつかせる可能性も考えられる。
中国では1949以来、中国共産党が統治している。自由な選挙や「言論・報道の自由」、三権分立、法の支配は存在しない。習近平国家主席は3期目の任期を獲得し、中華人民共和国の創設者・毛沢東と同じように終身指導者の道を歩みだしてきた。どうみても、習近平氏は独裁者のカテゴリーに入るといわざるを得ない。事実だけに他国の政治家から指摘されれば、怒り出したくなるわけだ。ベアボック外相発言に対する中国側の異常な反応はその事を端的に物語っている。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年9月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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