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工業材料や廃品がアート作品に
アート初心者でも楽しめる
工業材料や廃品がアート作品に

2023年のARTZUIDのテーマは「Transfer(移行)」で、主にネオ・ポップの作品がセレクトされています。また、工業材料や廃品、大量生産品、自然の木や石などを材料にしたアルテ・ポーヴェラや、ヌーヴォー・レアリスムの作品も展示されました。互いに影響を与えながら発展してきた芸術運動の作品を並べることで、古い様式から新しい手法への「Transfer」が示唆されています。
今回のARTZUIDには、鉄、アルミニウム、ポリエステル、材木、レンガ、ガラスなど、さまざまな素材の作品が展示されました。ARTZUIDは体験型展覧会なので、作品に触れることができます。私も興味のある作品を触りながら、つるつる、ピカピカ、ザラザラ、といった質感を思う存分楽しみました。

テープで貼り合わせたゴミにポリエステルと硬化剤を塗り、サンドブラスト加工、ワックスの重ね塗り、磨き上げの工程を経て、艶やかな表面と、独特の凹凸をもつ「石」が作られています。

一目見た時は、飛行機の焦げた残骸かと思うほどに力強く、なおも飛び立とうとするような姿に心を奪われました。後に、ルピナスの花を表現したものだと知り驚きました。アルミニウムをグリップマシンで折り畳んで作られています。

オランダ領ギアナ(今のスリナム)のアファカ文字をモチーフにした作品です。深みのある赤褐色のサビを見ていると、なにか昔の駅舎を眺めているような懐かしい気持ちになりました。

上の写真の左側の作品は、古い水道管をリサイクルし、地面から成長する植物に見立てています。既製品をアートとして展示する、マルセル・デュシャンのレディメイドの手法を受け継いでいます。
右側の作品にも多くの既製品が用いられていますが、オランダの陶器、中国の磁器、チェコのクリスタル、木材加工はセネガル、ブロンズの鋳造はインドというように、伝統的な職人技に重きを置いて、世界の優れた工房から収集されたものが使用されています。
アート初心者でも楽しめる
2023年のARTZUIDではアートを通して若者たちにアプローチしようと、親しみやすい作品がセレクトされています。陽気な形、カラフルな色彩、時にくすっと笑えるような作品は、その制作背景を知らずとも素直な心で楽しめました。

風船のような太っちょのコンバーチブルは、陽射しをうけてキラキラと輝き、 たくさんの人が集まる人気作品でした。消費主義の権力、富、体重などの問題について疑問を投げかける作品だそうです。

「ルート沿いに隠された1点を見つけられますか?」と公式サイトに書かれていた作品は、見上げるような高さに設置され、街路樹の枝葉のなかで逆立ちをしていました。

幾重かの鉄の輪が風に揺られて動いていたので近寄ってみると、なんと「優しく回してみてください」とのこと。鉄の質感やキィキィと軋む音に、子どもの頃に遊んだ公園のグローブジャングルを思い出しました。

遠くにカラフルな作品が見えると、疲れも忘れてどんどん歩いてしまいます。会場は緑豊かな通りで、木陰のベンチもたくさんありますので、彫刻を眺めながらゆっくり休憩もできます。