テクニックに振り回されず、まっすぐに想いを伝える
狭き門を突破し、アナウンサー職の内定を獲得した生徒さんと松下さん
ーー就職・転職活動で企業のMVVを研究して挑むことは一般的ですが、自己分析にしてみる人は少ないかもしれません。盲点ですね。本を読みながら「共感ストーリー」を試してみました。私の場合、コンパクトにまとめることがとても難しかった!
松下:まとめることは難しいですよね。でも、きちんとまとまったストーリーは、その人の魅力をストレートに、自然に経験と想いを伝える大きな武器になります。
なんらかの出来事があったという「事実」と、それをきっかけにどんな「想い」が浮かんだか。この「想い」は混沌としている場合が多いです。そこをしっかり言葉にして、事実とワンセットで伝えると、そのときに湧きあがった情熱やエネルギーも同時に届けられます。
ーーそれが、共感ストーリーのコンセプトですね。よく言われる好印象を与えるためのテクニックは効果がないのでしょうか?
松下:そうですね……。人に好かれるためのテクニックを実践すれば、好印象を与えるかもしれない。でも、ずっとそのテクニックを意識する必要がありますね。
いつも口角をあげていよう、相手と同じ動作や言葉をつかって親近感を持ってもらおう……テクニックを使う方へと意識が向いてしまいます。その労力は相手に話せること、伝えるべきことに使う方が良いかもしれません。
ーー「きちんと私を見てほしい」と考えたら、その通りですね。
松下:印象付けようとして意識的におこなう身振りと、無意識に想いが動かす身振りでは伝わる情報量が違います。
テクニックばかりを意識して、枠に囚われてしまうことは、どうしても不自然な印象となります。これは、もったいない。自分を見てほしいと願っているのに、相手を「見ていない」ことにもなってしまいます。採用する側は「仲間になる人」を探しているんですよ。
面接官は「仲間」を探している
名古屋で行われたベストセラー作家・時間管理の専門家石川和男さんとのコラボ講演会での様子
ーー著作でも、「信頼できる、期待できる人」を採用側は求めているとありました。
松下:この本で紹介した採用する人たちの考えが‟とても響いた”という感想を多くいただきました。模擬面接などで企業のコンサルティングもしていますので、採用する人たちの気持ちも耳にします。
「(面接官は)あなたのいいところを探そうとしてるよ」と伝えることで、面接に挑む人の不安を解消してさしあげたくて。不安を解消して、ベストの状態でチャンスに挑んでいただきたいという想いからです。
(インタビュー前編・了)
共感ストーリーとは、松下さんがそのご経験から見出した想いを伝えるためのメソッド(手法)です。どのようにしてそのメソッドが生まれたのか、さらには「良い/悪い話し方」についてお話をうかがったインタビュー後編は、9月21日(木)18時に公開します。
松下公子さん プロフィール
松下公子 (まつした・きみこ)
STORYアナウンススクール代表/株式会社STORY 代表取締役
1973年茨城県鹿嶋市生まれ。
アナウンサーを目指したのは、大学3年時に彼氏に振られたことがきっかけ。みんなに愛される女子アナになって見返したいと思った。しかし、第一印象が怖い、近づきづらいという見た目コンプレックス、さらに、コネなし、2流女子大出身、茨城なまりと4重苦に苦しむ。パッと見の印象ではなく、自分のことをわかって欲しいという思いから、アナウンサー受験では自分の経験と思いを熱く語る。その結果、25歳フリーターでアナウンサーに内定。テレビラジオ4局のステップアップを果たす。
その後、共感で選ばれるプレゼン手法「共感ストーリー」としてメソッド化。代表であるSTORYアナウンススクールでは、認定講師とともに個別指導で共感ストーリーメソッドを使った志望動機、自己PRを一緒に作成。面接における伝え方の指導も行い、NHKキャスターや地方民放局アナウンサーの内定に導いている。現在は一般企業の転職など選ばれる人になるサポートや講演活動を行っている。
著書に『「たった1人」に選ばれる話し方』『転職は話し方が9割』(ともにstandards)がある。
共感ストーリーは株式会社STORYの登録商標です。