実はフリマアプリ「メルカリ」の流行が追い風に?

ゲオHDがリユースビジネスで成功を収めた背景には何があるのか。

「当然CD・DVDレンタル業界の低迷はゲオHDも予想していました。そのため、業界各社はレンタルブーム終了後の事業形態を模索してきたという背景があります。そこでゲオHDが選んだのがリユース事業。実はゲオHDはレンタルビジネス全盛期から、当時業界1位だったTSUTAYAとの差別化を図る意味でも、ゲームソフトを中心とした中古品の買取りビジネスを早い段階から始めていたのです。大きな潮目となったのが、そうしたリユースビジネスの延長として、06年に総合リユースビジネスを展開していた2nd STREET(買収時は株式会社フォー・ユー、その後、2010年に株式会社セカンドストリートに商号変更)の買収。すでにノウハウを蓄積していた企業を取り入れることで、一気に事業を拡大することができたわけです」(同)

リユースビジネスが人気な理由はまだあるという。

「リユース人気に火が点いた要因のひとつに、実は19年ごろから急激に利用者を増やしたフリマアプリ『メルカリ』の影響があるのです。個人間で中古品の売り買いができるメルカリは、22年時点で総ダウンロード数が約6000万件にのぼるなど、圧倒的な人気を誇っています。コロナ禍の影響もあり、巣ごもり生活で家庭から多くの不用品が出たことに加えて、ちょっとした商売感覚で中古品を売り買いできる楽しさもあって、メルカリは消費者に急速に浸透していきました。メルカリのおかげで中古品を売り買いするという文化がさらに定着していったのです。

ただ、今でも堅調なメルカリですが、一方で発送作業を自分でやらなければいけなかったり、取引交渉を自分でやらねばならなかったりと、利用の面倒さがよく指摘されています。そのためメルカリの利用者の多くが20代から30代で、こうした作業を面倒に思う40代や50代の層はリユースビジネスにおいてブルーオーシャンだったのです。また、単価が安いもの、大きいものは送料負担があり、売っても利益が出ないため、メルカリでは売ることができません。そこをうまく取り込んだのが2nd STREET。郊外のロードサイドを中心に店舗展開している同チェーン店は、車などで大量に中古品を持っていっても簡単にさばいてくれるので、実はメルカリと競合しないうまいところを突いているのです」(同)

好調ゲオとは対照的に凋落してしまったTSUTAYAの誤算

そんなゲオHDとは対照的に、当時ライバルであったTSUTAYAは凋落が顕著だという。

「TSUTAYAを運営しているカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が、自社の既存事業が、ECや配信ビジネスなどへデジタルシフトした後の事業形態として計画していたのは大規模なビッグデータビジネスでした。会員証の代わりでもあったTポイントカードをコンビニ、ファミレスなどさまざまな異業種で使えるように連携したほか、オンラインでもこうしたTポイントシステムを軸にしたTポイント経済圏とでもいうべきビッグデータビジネスを目指し、利用者獲得に向けて精力的に動いてきました。実際、こうした取り組みでは先駆者的な側面もあり、当初は好調だったのですが、2010年代の後半から雲行きが怪しくなります。

それは、CCCの戦略を、Amazon、楽天といったEC大手、NTTドコモ、au、ソフトバンクなどの携帯キャリア大手が、ビッグデータビジネスに本格参入してきたためです。競合がTポイントよりも効率的なシステムが、急速に経済圏を構築したことで、TSUTAYAとTポイントの存在感は一気に薄くなってしまいました。また、TSUTAYAは書店ビジネスも展開していましたが、近年のECシフトのあおりを食らってこちらも不調気味。2011年にCCCは上場廃止してしまっているので、詳細な業績を知ることはできませんが、ゲオHDとの差が歴然なのは自明です」(同)

今後もゲオHDのリユースビジネスは安定的な人気を博すと予測されるという。

「ゲオHDがレンタルブームの終了を経ても生き残れたのは、ビッグデータビジネスというより大きな魚を釣ろうとして、GAFAや大手ECを競合としてしまったCCCとは異なり、市場規模は大きくなくとも、強いライバルが少ないリユース事業に徹した、その堅実さによるところも大きいでしょう。リユース事業はオンラインでもやってはいますが、あくまで実店舗がメインなことは今後も変わらないと思います」(同)

かつてライバル同士でしのぎを削りあってきたGEOとTSUTAYA。変革の時を経て振り返る両社の軌跡は、まるで「うさぎと亀」を見ているようだ。リユースビジネスという新たな鉱脈をつかんだゲオHDは、今後も地に足のついた成長を続けていくことだろう。

(文=A4studio/協力=中井彰人/流通アナリスト)

提供元・Business Journal

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