一方、2021年に対する2022年の成長率(YoY)では、クルマ(Automotive)が74%、HPCが59%、IoTが47%、スマートフォンが28%成長したのに対して、デジタルコンシューマ機器(Digital Consumer Electronics、DCE)はわずか+1%の成長に留まっている。この成長率から考えると、もしかしたら今のところ売上高に占める割合こそ5%しかないクルマ用半導体が、次の柱として期待されているのかもしれない。
そして、このような半導体を、TSMCは米国向けに約70%生産している(図8)。その主なカスタマーは、図2の半導体売上高ランキングで5位の米クアルコム、7位の米ブロードコム、8位の米AMD、11位の米アップルなどの米国のファブレスである。加えて、米インテルも画像プロセッサ(GPU)をTSMCに生産委託している。

このように見てみると、TSMCというファウンドリと米ファブレス等がWin-Winの関係となって、お互いに成長を促進していると言えるだろう。
今後の展望
2022年に世界半導体売上高ランキングでTSMCが世界1位になった。EUVを量産適用した2019年からの3年間で売上高は2倍以上となり、営業利益率は49.5%を叩き出した。この成長の源泉は、7nmや5nmの最先端半導体で世界シェアを独占していることである。TSMCは、この最先端技術で、HPCやスマートフォン用の半導体を、主として米国向けに生産している。
TSMCは2022年12月29日に3nmの量産を開始した。サムスンやインテルは、今までと同様、TSMCについてこれないと思われる。となると、TSMC1強の時代は今後も続くだろう。唯一気がかりなのは、中国が台湾に軍事侵攻する「台湾有事」の勃発である。そのような戦争が起こらないことを願わずにはいられない。
(文=湯之上隆/微細加工研究所所長)
提供元・Business Journal
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