先日、欧州連合(EU)の気象情報機関「コペルニクス気候変動サービス(C3S)」は、「2023年7月が観測史上最も暑い月となった」と発表しました。
日本でも猛暑日が連続しており、東京では猛暑日数の最多記録を更新しています。
もしもこのまま地球が灼熱の世界になったら。
私たち人間は、地下生活などの対応策を真剣に考えなければならない時が来たのかもしれません。
実は世界には生活のほとんどが地下にある町や、かつて2万人もの人々が生活していた失われた地下都市が存在します。
一体そこにはどのような生活があるのでしょうか。そしてそこでの生活は気候変動を耐え抜くための有効な解決策となるのでしょうか。
実在する地下都市
「クーバーペディ」穴蔵の白人
南オーストラリア州にあるクーバーペディは、オパール採掘の町として知られるだけでなく、町の住民の約60%が地下に暮らす独特な生活スタイルでも注目を集めています。
クーバーペディという名前は、アボリジニの言葉で「白人が潜る穴」を意味する「クパ・ピティ」に由来しています。
この地域の地上では、夏には気温が52°Cまで上昇し、冬には2°Cまで冷え込むことがあります。しかし、地下の住居、通称「ダッグアウト」は、一年を通して約23°Cの安定した温度を保っています。これによりエアコンなどの高価な冷暖房設備を必要とせず、生活するうえでのコストが抑えられるのです。

地上の暑さは非常に厳しく、鳥が落下したり、電子機器が壊れたりすることもあるほどですが、対照的に地下では広々としたラウンジやプールを持つ住宅もあり、一部の住民は安定した環境で贅沢な生活を楽しんでいます。
ただし、地下ならではの制約もあります。この地域は砂岩やシルト岩などの柔らかい岩で形成されているため、崩落を防ぐ目的から、住居は地表から少なくとも2.5メートルは離して建設しなければならないという規則があります。しかしながら、それでも時々陥没事故が発生してしまうようです。
なお、この町ならではのエピソードとして、ある男性が自宅のシャワーを設置する際、150万豪ドル(98万米ドル)相当のオパールを発見したという逸話が存在しています。

失われた都市デリンクユ

1963年、トルコのカッパドキア地方に住んでいた男性が自宅の改築中、地下の壁に空いた穴からニワトリが次々と消えていくのを目撃しました。
この穴の先を調査した男性は、巨大な地下迷路を発見。これこそ古代の失われた都市デリンクユの入り口でした。
紀元前2000年頃に築かれたこの地下都市は、地上から76メートルも下に広がっており、階数にすると18階にもなります。
驚くべきことに、この地下迷宮には教会、厩舎、倉庫、住居などが含まれており、最大で2万人もの人々が住むことができるとされています。また、地上の空気や光を効果的に取り入れるために、実に1万5000もの坑道が巧妙に配置されています。

デリンクユは数千年に渡り、戦時を含む様々な時期に避難所として使われてきたと考えられています。しかし、1920年代にギリシャ正教徒が追放された後、この都市は放棄されることになりました。
カッパドキア地方は、地上の気温が夏には30℃、冬は0℃と大きく変動する中、この地下都市は一年を通して約13℃の涼しい環境を保っています。そのため、食材の保存には理想的な場所となっており、現在トンネルの一部は、様々な果物や野菜の保存に使用されています。
クーバーペディと同じく、カッパドキアの岩石も加工しやすく、また、乾燥した土壌もトンネルの建設に適したものとなっています。